写真撮影2
突然、話に加わった新参者に、桐生を取り巻く空気が一瞬凍ったような気がした。
「ああ、じゃあお願いしよう」
うっすらと桐生が笑いながら、その新参者にカバンから取り出した一眼レフを渡す。
「え?」
困惑するクラスメイト。
「ありがたい申し出に感謝する。今、カメラマンを探していた所だ」
頭の良く、器量のある桐生なら、今の流れでクラスメイトが桐生と一緒に写真を撮りたがっていた事はわかっていたはずだ。
それを数秒で黙したこの男に、感嘆する。
慣れているというか、なんというか。
違います、とも言い出せないクラスメイトは、一眼レフの操作を会長に尋ねることが精一杯だったらしい。
「では、撮りますねー」
と言っているクラスメイトの声がちょっと淋しげだった。
「何突立っている。こっちにこい」
「わっ」
ボーっとクラスメイトを眺めていた俺は、突然引かれた手にバランスを崩し、桐生の膝の上に座ってしまう。
周りで見ていた者達の息を飲む声が聞こえた。
騒がしかった店内の喧騒が収まり、ようやく店内のBGMが聞こえるようになった。