狂い出す歯車
語りすぎたな。
長くて有名な担任の終業ホームルームがやっと終わったらしい。
「寛、何処か寄ってく?」
ホームルームが終わり、高城隆二(タカシロリュウジ)が扉から姿を表す。
幼馴染だが、今年初めてクラスが別になった。隣のクラスは随分前にホームルームが終わっていたのだろう。
「ごめん、今日はやめておくわ」
「もしかして、体調悪い?」
「なんか身体のダルさとれなくて」
「分かった、無理しないでね」
「ああ」
「でも寛、その風邪結構長いよね?」
「ただ熱があるだけだから、大した事ない」
「あんまり長引く微熱は心配だから、病院とか行った方が良いよ」
「そうだな。酷くなる様なら相談してみる」
「辛いなら、俺の親が車出してくれると思うから」
隆二は俺の親が共働きなのも知っていて、良く高城家にお世話になったりもする。隆二のお母さんである梨絵さんは、昔女優だった事もあり、群を抜いて別嬪さんだ。隆二が、そこらの女の子に靡かないのも頷ける。
昔から、晩御飯をご馳走になったりしている為、梨絵さんも俺を息子のように可愛がってくれる。
3年の5月の時期だからか、今頃総体に向けてラストスパートをかけているのか、いつもより学生の通りが少ない。
他愛ない会話をしながら、帰宅路を2人で辿った。
家に着くと隆二に別れを告げて、温度計を計ると、37度半ばだった。
ここ一ヶ月この微熱がずっと続いていた。いくら寝ても気怠い身体。
誰も居ないリビングを後にし、自室のベッドに倒れこんだ。
「しんどい」
口にすると呪縛のように、身体が重くなる。冷めない熱を抱えながら、俺は意識を手放した。