だいだいの時間

あー、くそ全然判んねえ。と、俺はコロンと机にシャーペンを転がして天井を仰ぐ。何でxとかyとかいうのはこうも変化しやがるのだろう。いらんお世話だ。数学のテストの散々たる結果の下に出されたプリントは半分も埋まっていない。それでも俺にしては珍しく、半日ほど頑張ったのだ。時々クロと遊んだり料理してみたり意味もなく俺と雪男のワイシャツとかズボンとかハンカチとかアイロンかけしてみたり、さして天気も良くないがシーツ洗ってみたりしたけど、机に向かうだけ上出来だと思う。もうちょっとだけ考えようかなって軽く傾けていた椅子を戻して、机に向かい直す途中。ふと窓の外に見慣れた人影が見えた。雪男だ。手には近所の行き慣れたスーパーの袋が下がっていて、きっとあの中には午前中に俺がメールで頼んだタイムセールの牛乳とかが入っているのだろう。せっかくの日曜を任務で潰したにも関わらず、そういうところはちゃんとしてくれるから兄としても鼻が高い。ふむ、相変わらず課題は終わる気がしないけれど、このお兄様が出迎えてやろう。それで厨房で雪男が買って来た牛乳やらを冷蔵庫に二人で入れて、一緒に課題をしよう。俺の無い頭を捻るよりも雪男に教えて貰った方がずっとずっと早く終わる。それに、塾ではないところで教えてくれる雪男は先生の時よりもずっと優しいから好き。俺は思い立つと寮の中で使っているサンダルに足を引っ掛けて、部屋を出た。そうだ、思いっきり抱き着いてやったら喜ぶかな。多分ちゃんと受け止めてくれるんだ。力強い腕を俺の背中に回して。そんな腕が俺は大好き。階段を二段飛ばしで降りたら、丁度玄関に頭が見えて、飛びあがるように足をそろえながら叫ぶように言った。

「おかえり」

鼓動と一緒に聞いた「ただいま」はとても暖かかった。





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