もどきじゃないです


燐と雪男とシュラと

「ただいまー」
「おかえり兄さん」
「今からご飯作るから待ってろ」
「うん」
「………」
「………」
「………なんでずっと台所見てんだ?」
「兄さんを見てるんだよ」
「えっ」
「僕、兄さんが料理してるとこ好きなんだ。奥さんみたいで」
「…みたい、は余計だろ」
「…え」
「〜…っ、なんか言えよ!」
「ごめんその…まさかそんな風に思ってるとは…」
「ちげーのか」
「ううん、兄さんは僕の奥さんだよ」
「わかったならよし。ほら、雪男」
「なに?」
「味見だよ味見、あーん」
「……ん」
「美味しい?雪男さん」
「んぐっ…に、兄さん!?」
「俺がお前の奥さんなんだから、お前は俺の旦那様だろ?」
「凄い破壊力だよありがとう」
「どきどきした?」
「むらむらした」
「へんたい」
「ごめんごめん」
「で?雪男さん、美味しい?」
「うん、燐が作るご飯はいつも美味しいね」
「浮気したくなくなる?」
「燐みたいな奥さんが居るのにするわけないよ」
「へへ、ん、ちゅ」
「ちゅ、ふふ、積極的だね?」
「…クラスの奴がお前のことかっこいーって」
「不安になったの」
「ちょっとだけな」
「じゃあ見せつけないとね」
「ん?」
「僕は兄さんの物だってこと」
「ふぇ!?」
「だから明日デートしよう」
「う、わりぃ明日バイト…」
「……休みなのに?」
「雪男怖い…」
「ごめん、だって四日もバイトばっかり」
「それは、その」
「ただいまーっ」
「シュラ!おかえり」
「んー、良い匂いだにゃー今日煮付け?」
「当たり。疲れてる?」
「いやあ、今度の文化祭で揉めて揉めて」
「なんかあったのか?」
「それがなー…」
「兄さん、もうそろそろ用意できるよね?僕呼んで来るよ」
「あ、おう」

パタパタ

「シュラー、これ運んで」
「うにゃ、うまそーだな」
「当たり前だろ」
「つまみ食いしたい」
「駄目だ」
「雪男には許すくせに」
「雪男だからな」
「惚気られた…」

(兄さんなんて言いかけたんだろ)

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テーマ「人外ファンタジー」
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