まず最初のお葉書です




朝、雪男に起こされて遅刻スレスレで登校して、全ての授業時間を睡眠時間に充て、昼休みに雪男とご飯食べて、午後の授業も寝て、塾行って、寝ながら頑張って、帰宅して夕飯作って、帰ってきた雪男とご飯食べて、久しぶりに三食一緒に食べたなあとか話しながら一緒に洗い物して、一緒に風呂入って、あれ、俺かなり雪男と一緒じゃないか?ぶら…こん?だっけ?みたいな?いやいや、でもいつも通りじゃん、ほら雪男だって仲良い兄弟はこれくらいするよ?普通だよ、なんて言ってるし。普通だ!…ん?なに、相談?相談?雪男が、俺に、相談…!!!!に、にやにやなんてしてねーよ!なんだなんだ、お兄様がバシッとお悩み解決してやるぞ!

「だから言ってみろ!」

「う、うん……やっぱりテンション、高くない?」

「いつもと変わんねーよ!」

「そう…まあ、兄さんにしか相談できないからそう言ってくれると助かるよ」

「俺にしか…っ」

「…うん、あのね、なんでガッツポーズしてるの?」

「が、がががががっつぽーずなんてしてない!」

「いやいま慌てて腕下げたよね」

「まあまあ、んなこといいじゃん。今大事なのは別だろ?何だ、相談って」

「いや、大したことじゃないんだけど」

悩みがあるとは思えないほど目が据わって、決意したような顔をしているからなんかちぐはぐしてるなあ。
あ!きっと話すのにも決意がいるような話なんだな!そんな事を俺に相談してくれるなんて普段なんだかんだ言っても俺のこと兄ちゃんって思ってくれてんだな…!よし、雪男、来い!







「…好きな人、出来たんだ」

「へ?」

スキナヒトデキタンダ?
隙無い火飛んできたんだ?
…違う違う、好きな人出来たんだ、だ!
好きな人。
こいつに、雪男に。
好きな人。
冷静沈着眉目秀麗成績優秀高身長高学歴最年少祓魔師で将来有望で性格は非常に紳士的とモテる奴を絵に描いたら多分こういうやつが出来るであろう、幾人もの女子の告白を断り続けて早15年彼女いない歴は年齢と一緒だけど少しばかり元とは意味の違う男の鏡(ここまで志摩の受け売りな)、奥村雪男に。

好きな人。

……………………………………………………………………。

「ええええええええ!?」

「…煩い」

「誰、だれだれだれだれ!!!」

「……煩い」

「あ、そっか、さすがに兄貴でも言いたくないよな」

「そういう訳じゃないし、だったら兄さんに相談しないよ。だからちょっと、落ち着いて」

先述べたとおり珍しい、というか俺の知っている中では一度もない現状に舞い上がっていると、とても、とても深く溜息を吐かれつつ、静かに諭された。
自分のことなのにどうも淡白だ、こいつ。…淡白って卵白に似てるよな。

「とりあえず誰か言ったほうが良いよね」

「ああああ、待った待った!!!とりあえず、まず年から!!」

「なんで」

「ちょっとずつヒント貰いながらお兄様が当ててやる!!」

もう一度、深い深い溜息。
悪いな、雪男、相談料だと思って諦めてくれ。
あ、また溜め息吐かれた。

「同い年」

「おおっ。やっぱりクラスメート?」

「違う」

「でも学校の奴だろ?」

「そうだね」

ふむう。雪男と違うクラスの取り巻きの女子だろうか。聞いたら違うと言われた。
最近こいつラブレター貰ってないしなあ。何で知ってるかって…ラブレターとか貰ったら普通兄弟に報告するだろ?違うのか?雪男はそうだって言ってたんだけどな…。

「んー…しえみ?」

「惜しいかな、塾生は合ってるよ」

「まろまゆ!」

「違う。…というか兄さん、その仇名やめた方が良いんじゃない、女性は気にするって聞いたことあるし」

「気をつける。しえみとまろまゆねえのか…?あ、元って点では朴もか」

「違う」

「…もういねえぞ」

「兄さんのよく知ってる人なのになあ」

「シュラか?言っとくけどシュラ18歳だぜ」

「何言ってるのシュラさんはにじゅ…どこからか空き缶が飛んできやがった……。とにかく、違うよ」

「お前、どっかで嘘吐いてるだろ!」

「しょうがないなあ、じゃあもう一つヒントあげる、15年間ずっと一緒にいます」

「へ」

思考が固まった。
いや、それでは。今までのヒント関係無しに、たった一人しかいないじゃないか。
…ああくそ、嫌だって思ってないよ、俺。むしろ。むしろ、凄く嬉しいって思ってしまって。
顔がひどく熱かった。雪男はニコニコと素晴らしくいい笑顔を俺に向ける。

「それでね、兄さん。相談っていうのは、告白の仕方についてなんだけど」

「そん、な…の」



答えられるわけない。

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