弟にカンキンされる話

 ・色々とやらかしました
 ・一応監禁ネタ
 ・ねつ造しまくってるので注意














 俺は、弟にカンキンされている。

 夏休みが始まってすぐの、扇風機しかない部屋じゃすぐにアイスが溶けてしまうようなあついあつい日。泊まりがけの任務から帰ってきた弟がお帰りの代わりに言った。


 「にいさんを監禁したいんだけど」


 俺はカンキンがどういうものか判らなかったから、雪男に聞いた。閉じこめておく事だよ、と雪男は言った。僕以外の誰にも兄さんを見せないようにするんだ、とも。
 やっぱりよくわからなかったけれど、きっとそう言ったらバカだねとこのムカつく弟さまは涼しい顔で言いやがるから、俺はよくよく判ったフリをして、いいよ、と言った。
 雪男はにっこり笑ってもう部屋は用意したんだ、と見慣れない鍵を取り出した。カンキンには部屋が必要らしい。兄さんが退屈しないようにキッチンもあるからね。カンキンって退屈な物なのか?と俺は思った。カンキンされた今はそれが本当だって知ってる。カンキンはすっげー退屈だ。


 「今日にも移動して欲しいから、荷物をまとめてくれる?」

 「おう」


 それから一時間後、俺は雪男の言う通り、荷物をまとめて今俺がカンキンされている部屋に来た。クロは一緒じゃなかった。カンキンとはそう言う物らしい。
 雪男が用意した部屋はマンションだった。すげー高いマンションの一番上の部屋で、このフロアにはこの部屋しかないらしい。ベランダは改造されて温室にされていた。


 「兄さんは飛び降りても平気な体だし、それに野菜も育てられるから一石二鳥でしょ?」


 なにが一石二鳥か判らないが、野菜は確かにいっぱいあったからいいなと思う。
 雪男は俺に、温室の他にも寝室とかリビングとか風呂とかキッチンとか(でかいシステムキッチンだった!)を案内したあと、いくつか約束事を並べた。

 いち、雪男が帰ってきたらおかえりと言うこと
 いち、雪男がいるときは雪男の見えるところにいること
 いち、欲しいものがあったら雪男に言うこと
 いち、ここから逃げだそうとしないこと
 いち、誰が訪ねてきても出ないこと


 「雪男がピンポンしたら?」

 「僕は鍵を持ってるから大丈夫」

 「雪男が鍵をなくしたら?」

 「愛で判って」

 「あいあいさー」

 「よろしい。最後に、僕の言う事は必ず聞いてね」


 俺はこくりと頷いた。
 雪男が、にいさんキスして、と言った。
 俺は初めて雪男とちゅーをした。






 雪男にちゅーしたあと、いろいろと言えないことをされた。俺がいやだっていうと雪男は約束事を引き合いに出した。卑怯だ。
 ちょっと寝てから(雪男が言うには気絶らしい)、ご飯を作って、雪男にぎゅうぎゅうされながら一緒のベッドで寝た。ベッドはバカみたいに広かったからそんなくっつかなくてもいいのに、変な雪男だなあと思った。
 翌朝、朝ご飯をおいしいと言って平らげてから、雪男はどこかへ行ってしまった。
 俺はべたべたになったものを全部洗濯機(乾燥機、すごく便利)に入れて、食器を洗って、部屋を掃除して、野菜に水をやって、やることがなくなった。
 クロもいないし、この家にはテレビもない。後で雪男にクロとテレビを頼まなければ。ひまだーと呟きながら、寮から持ってきた荷物を漁った。
 携帯電話が出てきた。ラッキー、とボタンをかちかちしたが、電源が切れていた。充電器をなんとか発掘して携帯の電源を入れる。すぐに着信音が鳴った。
 

 「もしもし」

 『燐か!?』

 「おー、シュラ」


 シュラは慌ててるみたいだった。今どこにいるんだ、とか言っていた。俺は知らないと答えた。

 「俺いま雪男にカンキンされてんの」

 『…そうか』

 「雪男から聞いてねーのか?」

 『おまえ、雪男のこと気づいてないのか?』


 俺はにっこり笑って電話を切った。
 それから携帯を粉々に砕く。


 「気づいてるよ、にーちゃんだもん」


 たぶん誰も聞いてなかったと思う。







 あれから一ヶ月。
 鍵が開く音で目が覚めた俺は、約束事に従って玄関まで駆けていき雪男におかえりと言う。
 ただいま、と雪男は俺を抱きしめてちゅ、ちゅ、とキスの雨。


 「晩ご飯は?」

 「サケのムニエル」


 雪男が大好物、と笑った。応えるように俺もにっこり笑った。




 俺は弟にカンキンされている。
 俺をカンキンしている弟の耳は、俺と一緒で尖っている。おそろいだ。双子だもん。

 追伸。
 雪男にテレビとクロが欲しいと言ったら、兄さんは僕が昨日言った事をもう忘れたんだね、バカだね、と澄まし顔をされた。
 むかつく!





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 書き終わってこれは軟禁ではないかと思いましたが燐くんの頭がパンクしそうだったのでスルーしました

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