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「なんでって……、そんなの、」

「アイツか、」

最後まで言い終わるより先だった。聞いたこともないような低い声で、俺の目の向こうにいる"アイツ"を睨んでいた。

「アイツって、」

「蓮也」

言われて誰も脳内に浮かばなかった。
レンヤ。聞いたこともない"アイツ"の名前に一瞬の間が空く。

「大窪蓮也。」

フルネームで聞いてようやっと、さっきまで居たアイツとの風景が蘇った。
ただ思い出しただけなのに、心の中を見透かされたように鼓動が速くなった。
(寿命、縮まりそう)
冷静な頭の一部がそう考えていて。できるだけ普通に、いつもと変わらないように、かぶりを振った。
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