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肩を掴んで押し返そうとした。できるだけの力を込めて。でもそれで押しのけられるほど、尚輝は軽いやつではなくて。

「愛、」

口が離れて、呼ばれた名前。ここへ来てから二度目のその声は、すがるような声で。

「なんで、」

二度目の質問は、軽さが違った。
二度目の質問は、声が震えていた。自分の耳で聞いて、びっくりするほどに。

「違うんだ。」

何がだ。

「そうじゃない。」

何がだ。

「……ごめん、」

俺より身長の高い尚輝の声が、耳のすぐ傍で聞こえた。その声は、やっぱりすがるような声で。
(何がだ。)
同じ質問が頭の中を占めていた。
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