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「そ、っか、」

動かない鼓動に違和感を感じても、その原因が誰のせいなのか分かっても、その"誰か"からの視線を背中に感じても。それでも。

「あんま一樹に心配かけんなよ?」

普段通りに装う。それしかできなかった。

「一樹はいーのっ! アリサ今、好きな人いるもん、」

恥ずかしそうに言う姿は乙女めいていて。
かわいらしい、とは思う。心から。

「誰ー?」

相変わらずの平常心。テンションすら上がらない。
そんな俺の代わりに話に突っ込んできたのは、マイだった。

「なーいしょっ! てかだれー?」

あっくんの友達? 背中をつつく小さな衝動に後ろを振り向いたせいで、その質問には答えられなかった。
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