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こんなにも鼓動は早いのに。
震えることも、早口になることもなく。いつもと同じ表情。こんなにも鼓動は早いのに。
目をそらすことも、なかった。

「何しでかしたんだよ」

逸れた話題に、ゆっくりと鼓動は治まっていった。

ミノルたちに会ったときのようにまた挨拶をして、また名前を教えてもらって、また忘れて。
アイツの存在以外は、別段変わらない時間だった。

鳴りだした着信音は、どの音符も俺の耳に入ってこなかったくせに。

「電話、」

たった3文字の言葉だけで、心臓の鼓動が早まるのが聞こえた。
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テーマ「人外ファンタジー」
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