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尚輝の隣にいる俺に、気付かないはずがない。一瞬、わずかに目を見開いて、互いに目をそらした。
「……よ、」
聞き慣れた声、見慣れた顔。この場の誰よりも明るい髪。
「……、よ、」
でも、今は、聞きたくなかった。見たくなかった。一番会いたくなかった、アイツ。
「知り合い?」
「クラスメイト」
ちくりとした。
でも誰も、それ以上を知らない。あの時間を知らない。だから、
(それ以外に言えねぇもんな、)
「あれ、でも愛って、」
「転入してきたんだよ」
まるで何事もなかったかのように。我ながら、うまい演技だと思った。
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