▼4 「おう。……吸う?」 そう言ってタバコを差し出してくる。ここからじゃ銘柄がよく見えない。 「どこ、」 「マルメン」 メンソールは苦手だ。中学のとき、友達が吸ってるメンソールを1本貰ってむせたことが原因だと思う。 あれ以来吸っていないメンソール。 無言で1本貰ったら、まるでホストみたいにライターで火を点ける。俺も付き合ってやられてやった。 「山下って吸うんだな」 吸って、吐いて。 「貰ったときだけな」 吸って、吐いて。 「ガチの優等生だと思ってた」 吸って、吐く。 「本物の優等生は裏でワルなんだよ」 さっきより短くなったタバコを挟んだまま、意味深に笑ってやった。 ちょっとびっくりした顔をされて、 「さすが」 笑顔と一緒に返される。 何がさすがなのか、俺には皆目見当がつかなかった。 体を自ら焼いて縮めていくタバコと共に、この街を一望した。 隣では、俺よりずいぶんと大きなヤンキーが、俺と一緒になって一望している。 普通人とヤンキー。 端からすると不思議な組み合わせだろう。 俺だってホントは緊張している。ヤンキーは怖い。だがコイツは、そこまで怖くなかった。 ……慣れってのは恐ろしいものだ。 <<Retune? |