「おう。……吸う?」

そう言ってタバコを差し出してくる。ここからじゃ銘柄がよく見えない。

「どこ、」

「マルメン」

メンソールは苦手だ。中学のとき、友達が吸ってるメンソールを1本貰ってむせたことが原因だと思う。
あれ以来吸っていないメンソール。
無言で1本貰ったら、まるでホストみたいにライターで火を点ける。俺も付き合ってやられてやった。

「山下って吸うんだな」

吸って、吐いて。

「貰ったときだけな」

吸って、吐いて。

「ガチの優等生だと思ってた」

吸って、吐く。

「本物の優等生は裏でワルなんだよ」

さっきより短くなったタバコを挟んだまま、意味深に笑ってやった。
ちょっとびっくりした顔をされて、

「さすが」

笑顔と一緒に返される。
何がさすがなのか、俺には皆目見当がつかなかった。

体を自ら焼いて縮めていくタバコと共に、この街を一望した。
隣では、俺よりずいぶんと大きなヤンキーが、俺と一緒になって一望している。

普通人とヤンキー。
端からすると不思議な組み合わせだろう。
俺だってホントは緊張している。ヤンキーは怖い。だがコイツは、そこまで怖くなかった。
……慣れってのは恐ろしいものだ。
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