▼102 「でも、」 ちゃんと伝えなくちゃいけないと思った。これからはアイツではなくて、ちゃんと尚輝と向き合うと。"恋人"として、ちゃんと。 「俺は、尚輝と、ちゃんと"恋人"になりたい」 揺れていた瞳が、俺の瞳と合わさって、動かない。 「、」 名前を呼ぶことは、できなかった。 ずっと優しかった手は今、俺の頭を強く押さえてて、あの日初めてキスされた時みたいに、舌が動き回ってうまく呼吸ができなくなる。それでも。 やっぱり、違う。 抵抗しない俺も、それを分かっている尚輝も。今はもう、違う。 「愛、……」 お互いの唾液が合わさった糸が切れるのを見た。今更自分の顔に血液が集中していることを自覚して、恥ずかしさが増す。 そんな中でぶつかった尚輝の視線は、さっきと違った"愛しさ"をはっきりと感じ取れた。 「あんま、見んな、」 最後は本音を隠すようにバカ、と暴言を吐いた。 「ごめん、」 あまりに真剣なその声に、違和感を持った。視線を再度上げると触れるだけのキスが落ちてきて、無意識に目を閉じた。 <<Retune? |