▼94 予想していた通り、尚輝は残りの宿題を1日かからずに仕上げてしまった。 全日制の高校に通う尚輝は、中学時代と変わらず9月頭から新学期が始まる。それまで一週間を切った。 俺たちは特別何をするわけでもなく、ただ一緒にいて、一緒に笑った。恋人というよりは、やっぱり友達の延長線のように思えた。 夏の熱帯夜、クーラー入れっぱなしにしたまま何をするわけでもなく一緒に寝たり、定番のゲームをしたり、夜の公園をバカみたいに走り回ったり。 "友達"と"恋人"との差が分からないまま、尚輝との毎日を過ごした。 「今日泊まるな、」 「ん」 夏休み最後の日。新学期が始まる前日。 18度まで下げたクーラーの下、タンクトップ1枚でアイスを頬張っていた。炎天下を原チャで2ケして走り回った帰りに買った淡い水色のアイス。それくらいでちょうど。もしかしたらまだ暑いかもしれない。 「明日だっけ、学校」 「ん」 尚輝はアイスを食べるのに夢中だ。棒から落ちそうなアイスを、なんとかバランスを取りながら口に入れようとしている。 (あ、) その甲斐虚しく、フローリングの上に着地した。見事な自殺だ。 <<Retune? |