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思わず目線が反れた。明るくなくて良かった。自覚してすぐ苦笑いをした。
アイツは相変わらず赤をまとっている。

「吸う?」

そう言って差し出されたのは黒を基調とした緑のデザインの箱。真新しい、それ。

「変えたんだ?」

そっと手に取って、パッケージを見る。同じタール数とはいえ、やはり味は違うのだろう。

「なんとなく、な」

ちょっとした好奇心で、まだ窮屈そうに身を寄せ合っている1人をつまみ出した。

「もっとインポなんじゃねぇの、」

口にくわえただけで分かる、きついメンソール。慣れない刺激。
箱の代わりに出てきた火で少しだけ頭を焦がして、草を燃やし始めた。想像通りの味が、舌の上から喉を通った。

「そんくらいで丁度いいんだよ」

チンっ、
よく通る高音と共に火は消えて、弧を描いた唇は再び闇に飲まれた。

「バカ言え、」

冗談を言い合えるこの関係に久しぶりに触れて、胸の真ん中が意に反して満たされていくのが分かる。
その意味を理解している自分にも、抑えようとしても抑えられない自分にも、腹が立つ。

視線の先にあるこの距離は変わらない。
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