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カツ、

罵声と共にヒールの音が一瞬響いて、ハニーブラウンの髪がなびく。
(泣いて、る?)
驚いた顔と不釣り合いな潤んだ目と視線が絡まった。だがそれはすぐ前を向いて、俺が来た道を進んで消えた。

「山下……?」

久しぶりにちゃんと見たアイツの髪は前と少し違うくて。手元にある赤い光だけがやけに明るく感じた。

「……彼女、泣いてたけど、」

いつも通りの一歩がやけに重い。
何を言えばいいのか、まだ考えのまとまらない頭が出した答えはそれだった。

「勝手にさせとけ」

指先が赤く光って、また鈍る。こんな暗がりの中でも吐かれた煙が白い。
(そんなのでいいんだ、)
アイツから見たらどうか分からない、自分では頷いたつもりでいて、姿を追いかけようと視線だけ後ろに送ったが既に確認できなかった。

「あの後、」

突然聞こえた声に慌てて視線を戻す。

「祭りの日、会ったあの後、」

理不尽かもしれないが、憤りを覚えた。

「尚輝とどうなった、」

俺はあの時必死で。理不尽だと分かっていても、頭の隅であろうとなんだろうと、助けを求めて来なかったくせに。何を今更。

「どうって、」

別に。
嘘を吐いた。咄嗟だった。
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