▼88 尚輝の宿題は、結局その日は終わらなかった。けど、言ってた通り、後少しのところまで進んだ。 多分、1日あれば確実に終わるってほどまで。 「送るよ、」 帰り際、尚輝はそう言ったけど断った。 ただ送ってもらうのが悪かっただけだ。それ以外に別段意味はない。 外に出るともう真っ暗で、人通りの少ない尚輝の家の前でキスをした。互いの額に。 手を振って別れて、そのまま帰路を歩く。 尚輝の家から俺の家まで、徒歩で帰れる距離。より道なんてせずに帰る。 街灯が黒いアスファルトを照らすその向こうに、いつものあのスーパーが少し、姿を見せた。 そこに多分、アイツはいない。 あの屋上にはあの日以降、一度も行ってなかった。 (たまには、) 帰路とは違う道へ足を踏み出して、久しぶりにそこへ向かう決心をした。 見慣れているはずの道なのに、なんだか、懐かしく感じていた。 <<Retune? |