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(でも……。)

「寂しくなった?」

耳のすぐ横に息がかかる。優しく、笑ってる。

「……うん」

(でも、)

「もうちょっとだから、待っててな、」

一瞬ふわっとにおいが漂って、それが遠ざかる。髪の毛がばさばさと鳴って、更に遠ざかった。

尚輝は優しい。
それは本当に、優しい。

(なにか、違う。)

再び机に向かった背中を見て、不意に涙が出そうになった。今時そんなの、女の子でもなかなかいないだろうに。
純な女の子みたいに胸が締め付けられて、恋愛初心者でもないはずなのに恋愛で悩んで。泣きそうになって。
でもここで泣くわけにはいかない。尚輝に心配かける。

今の恋人は、尚輝だ。

応えられずにいる自分に腹が立った。
尚輝はあんなにも、こんな俺を好きでいてくれてる。尚輝でいいんだ。アイツじゃなくて。

あの漫画のヒロインや主人公みたいに、守るべきは、……アイツじゃないんだ。
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