▼85 「……ありがとう」 本当に、ありがとう。甘やかされてばかりの俺を好きになってくれて。それでもまだ、甘やかしてくれて。 尚輝と一緒にいる時間は、楽しい。 でもどうしても、アイツだったらと思っている自分がいる。アイツとの時間とを比べている自分がいる。 アイツとは、こんな甘い時間を過ごしたことなんてないけれど。 「宿題、早く終わらせて、残り楽しもう」 一週間しかないんだから。 まるで"普通のカップル"みたいな体勢の俺ら。同性ってだけで、それ以外は何も変わらない。 「分かった、」 そう言って俺の額に唇を寄せて。それが俺らのキスの代わり。 そして机に向かう尚輝の背中を見送る。 あれ以降、まともなキスは一度も交わしていない。 何もしなくていいのかと、手を握ろうともしない尚輝に聞いたら「ちょっとでも俺のこと受け入れてくれたときでいいから」と返ってた。 せめて手は握ろうと言って、自分から手を握った。祭りあの日から、ちょうど一週間経った日のことだ。 <<Retune? |