▼84 そして腕の中から逃げる。……そうやっていつも、曖昧に返す。 でも気づいているんだ。いつも、苦笑いをこの背中に投げかけていることを。 悪いとは、思ってる。 けど。 「じょーだんだって、」 いつも甘やかしてくれる尚輝に、つい、甘えてしまう。悪いとは、思ってるんだ。 (気持ちの整理がつくまでは、) だからこそ、同じ腕の中にまた戻る。 「ゆっくりでいいんだ」 尚輝は優しい。 「ゆっくり、俺を見て、」 尚輝は強い。 「俺のこと、好きにさせてみせるから」 尚輝は、甘い。 「それまで、我慢するよ」 俺は、卑怯だ。 心の中で謝りながら、変わろうと努力せず、甘えっぱなしだ。悪いとは、思っているんだけれど。 <<Retune? |