84

そして腕の中から逃げる。……そうやっていつも、曖昧に返す。
でも気づいているんだ。いつも、苦笑いをこの背中に投げかけていることを。

悪いとは、思ってる。

けど。

「じょーだんだって、」

いつも甘やかしてくれる尚輝に、つい、甘えてしまう。悪いとは、思ってるんだ。
(気持ちの整理がつくまでは、)
だからこそ、同じ腕の中にまた戻る。

「ゆっくりでいいんだ」

尚輝は優しい。

「ゆっくり、俺を見て、」

尚輝は強い。

「俺のこと、好きにさせてみせるから」

尚輝は、甘い。

「それまで、我慢するよ」

俺は、卑怯だ。
心の中で謝りながら、変わろうと努力せず、甘えっぱなしだ。悪いとは、思っているんだけれど。
<<>>

<<Retune?
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -