▼83 頭の後ろで降参を叫ぶ声。指から力を抜けば背中から圧力が退いた。 「せっかく宿題ないのに、なんでしなきゃなんないんだよ」 体を横に倒せば、間近に困った表情の顔があって。 「恋人の宿題くらい手伝ってくれたって損はないだろー、」 されるがままに腕の中。 この一週間、一番多く聞いているかもしれない単語。"恋人"だとか"彼氏"。友達の延長上ではないと改めて実感させられる。付き合っているんだと。 「自分でやんなきゃ意味ないだろ、」 頑張れよ。あまりに近すぎる顔に向かっては言えなくて、熱の伝わる胸に呟いた。 そして事ある毎に返ってくる返事は決まっていて。 「愛がキスしてくれたら頑張れる」 「ばーか、」 俺の返事もだいたい、決まっている。 <<Retune? |