滴り墜ちる

俺とアイツとは、いわゆるセフレだ。
体を重ねてはお互いを高める為に「好き」「愛してる」という。
でも、実際アイツは俺を愛してないし、俺もアイツからの愛は求めてない。お互い、無意味な現実逃避を続けるだけだ。

ただ、何でだろうか?
最近の俺はおかしいみたいで、アイツからの「好き」「愛してる」を真に受けてしまいそうになる。それと同時に、言い様のない寂しさに追い込まれ、セックスの途中、涙を流すアイツを見て胸が痛くなる。

人が言う愛だの恋だのとは別の次元で、アイツを求めているのだと思っていた。
何もない時にアイツとのセックスを思い出してはアイツに会いたいと、そう願うのは、欲求不満なのだと。そう思っていた。

いつしか、アイツに愛されたいと思うようになった。
それに気付いた俺は、何度も何度もアイツに「好き」「愛してる」と言い続けた。だけど、俺の声はアイツの甲高い声に掻き消される。
それなのに、アイツからの「好き」「愛してる」が、増えた気がした。
アイツは、俺をどう思っているんだろう?

俺はアイツに恋しているのかもしれない。


突然、アイツからの連絡は途絶えた。会いたい、と言う俺からの連絡も断られるようになっていた。
理由は様々だったが、他にもセフレがいる、その言葉は俺の胸に何かドス黒い物を落として消えずに残った。

黒い物は中々消えそうになく、むしろ、アイツに連絡を取り断られる度にそれは色濃くなっていく。
何なんだ……
得体の知れない感情に苛立って、先程までアイツと通じていた携帯を強く握り締めた。

珍しくもアイツから連絡が来たその携帯は、既にディスプレイの点灯が消えている。
この気持ちをアイツに伝えた方がいいか?
悩んだところで何もならないだろうな……きっと叶いはしないだろうけど、アイツに伝えてみようと思う。


この黒い物が消えるといい。

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