嘔吐

僕と彼とは、いわゆるセフレだ。
体を重ねてはお互いを高める為に「好き」「愛してる」という。
でも、実際彼は僕を愛してないし、僕も彼からの愛は求めてない。お互い、無意味な現実逃避を続けるだけなのだ。

ただ、どうしてだろう?
最近の僕はおかしくて、彼からの「好き」「愛してる」を真に受けてしまいそうになる。それと同時に、言い様のない寂しさに追い込まれ、セックスの途中、何もないのに涙が出てしまう。

人が言う愛だの恋だのとは別の次元で、彼を求めているのだと思っていた。
何もない時に彼とのセックスを思い出しては彼に会いたいと、そう願うのは、欲求不満なのだと。そう思っていた。

いつしか、彼に愛されたいと思うようになった。
そんな考えをしている事に気が付いて、僕は彼と連絡を取るのを控えた。
……一時の気の迷い。
そう考える事に集中した。
彼から連絡が来るのは、多くて一週間に二回。それ以上は来なかった。
その間、彼の言葉を少しでも聞きたくなくて、彼が最中に「好き」「愛してる」と言いそうな時は、高い声を上げて聞かないようにした。
その代わり、僕から彼に対しての「好き」「愛してる」は、中身の色濃いモノとして何度も言った。

僕は、彼に恋をしていた。


彼からの連絡をも断るようになった。多くて一週間に二回あった彼の連絡は、次第に二週間に一回へと減った。
体調が悪いのだと言えば看病に来られてしまうので、他にもセフレがいると嘘を吐いた。何故か、胸が痛んだ。

何度目かの嘘の後、突然嘔吐した。

その後も嘔吐を繰り返し、医者はストレスから嘔吐だろうと、そう僕に伝えた。
嘘吐く事に慣れていた筈の僕が、唯一彼にだけ、嘘が吐く事に過大なストレスを溜め込んでしまったのだろう。

僕は、この気持ちを彼に伝えようと思う。
彼はきっとこの気持ちを鬱陶しく思い、僕との関係を断ち切るだろう。


それでいいと思った。
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