▼嘔吐 僕と彼とは、いわゆるセフレだ。 体を重ねてはお互いを高める為に「好き」「愛してる」という。 でも、実際彼は僕を愛してないし、僕も彼からの愛は求めてない。お互い、無意味な現実逃避を続けるだけなのだ。 ただ、どうしてだろう? 最近の僕はおかしくて、彼からの「好き」「愛してる」を真に受けてしまいそうになる。それと同時に、言い様のない寂しさに追い込まれ、セックスの途中、何もないのに涙が出てしまう。 人が言う愛だの恋だのとは別の次元で、彼を求めているのだと思っていた。 何もない時に彼とのセックスを思い出しては彼に会いたいと、そう願うのは、欲求不満なのだと。そう思っていた。 いつしか、彼に愛されたいと思うようになった。 そんな考えをしている事に気が付いて、僕は彼と連絡を取るのを控えた。 ……一時の気の迷い。 そう考える事に集中した。 彼から連絡が来るのは、多くて一週間に二回。それ以上は来なかった。 その間、彼の言葉を少しでも聞きたくなくて、彼が最中に「好き」「愛してる」と言いそうな時は、高い声を上げて聞かないようにした。 その代わり、僕から彼に対しての「好き」「愛してる」は、中身の色濃いモノとして何度も言った。 僕は、彼に恋をしていた。 彼からの連絡をも断るようになった。多くて一週間に二回あった彼の連絡は、次第に二週間に一回へと減った。 体調が悪いのだと言えば看病に来られてしまうので、他にもセフレがいると嘘を吐いた。何故か、胸が痛んだ。 何度目かの嘘の後、突然嘔吐した。 その後も嘔吐を繰り返し、医者はストレスから嘔吐だろうと、そう僕に伝えた。 嘘吐く事に慣れていた筈の僕が、唯一彼にだけ、嘘が吐く事に過大なストレスを溜め込んでしまったのだろう。 僕は、この気持ちを彼に伝えようと思う。 彼はきっとこの気持ちを鬱陶しく思い、僕との関係を断ち切るだろう。 それでいいと思った。 <<Retune? |