家族ごっこ

目の前には見慣れた男。見慣れた服装、見慣れた髪型。
いつもと違うのは一つ。

「お前、子供の前でキスするつもりか。」

繋いだ手の先、俺らのやりとりを見上げてるちびっこ。もとい翔太。

「ダメ?」

「ダメ。」

「何で」

「悪影響だろ。」

「どこが」

「ホモなとこ。」

「……。」

俺の言う事は間違ってない。
だからコイツも言い返せなくて困ってる。困る事でもないのに。キスくらい、ガマンすればいいだろ?

「ホモってなに」

下から幼い声。

「子供は知らなくていいの。」

軽く手を揺らして笑顔を向ける。
これだから子供は嫌いだ。無知だから何でも聞いてくる。

「翔太、今日からレイの事ママって呼べ。俺の事はパパな?」

は?アホか。

「ヤだよ。レイ男じゃん。」

ごもっとも。俺だってママよりパパがいい。……てアホか。
とりあえず殴っといた。
そしたら翔太も真似して一発。合計二発。
いて、とか聞こえた気がするけど気にしない。聞こえない。
俺ら絶対悪影響の塊だ。

「だって、そう言っといたら出来るだろ?」

「アホ。」

もう一発。合計三発。アホの数だけ殴られるんだ、コイツは。

「何を?」

「気にすんな、アホの話聞いてたらアホになるぞ。」

「ん、分かった。」

「待て待て待て待て、アホって俺か?」

「お前以外誰がいる。」

「そーだそーだ」

アホが移る。そう思って家路を急いだ。
しまった、俺、コイツと一緒に住んでんだ……危ないな。引っ越そうかな。

「…………お前が女じゃなくてホントに良かったよ。」

女だったら妊娠しまくりだっつーの。どこまでもアホだな。
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