今日も、飛び出すように部屋を出る。
右手の中には見慣れた鍵。もうじき冬に突入するというこの寒い季節に、タンクトップ一枚。
だが関係ない。行き先は、5歩もあればたどり着ける。

薄い壁を隔てて聞こえてくる声にイライラしていた。
なんだって。なんだってアイツは、いつもこうも…!

「毎日毎日昼間っから盛ってんじゃねェよ!」

ドアも向こう側にはアイツ。その上には裸体の女。
突然怒鳴り込んできた俺を見てキョトン顔で見上げてくる。ようやっと発言を理解して、外した視線の先は下。

「ちょっと! 毎日ってなによ!」

アタシがここ来たの初めてじゃない! 棘を含んだ高い声。うんざり顔の男。
(気持ちは分からなくもないがな。お前がするべき顔じゃない。)
それに気を悪くしたのか、更に喚き散らす。
「服を着ろ」とは心の中で伝えておいた。れっつテレパシー。初対面の相手には通じない可能性大。
彼女は、他の男に裸体を見られて何も思わないのだろうか。

「うるせェ、」

低い、ドスの効いた声。

「……萎えただろーがよ。どけ。さっさと帰れ」
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