▼1 今日も、飛び出すように部屋を出る。 右手の中には見慣れた鍵。もうじき冬に突入するというこの寒い季節に、タンクトップ一枚。 だが関係ない。行き先は、5歩もあればたどり着ける。 薄い壁を隔てて聞こえてくる声にイライラしていた。 なんだって。なんだってアイツは、いつもこうも…! 「毎日毎日昼間っから盛ってんじゃねェよ!」 ドアも向こう側にはアイツ。その上には裸体の女。 突然怒鳴り込んできた俺を見てキョトン顔で見上げてくる。ようやっと発言を理解して、外した視線の先は下。 「ちょっと! 毎日ってなによ!」 アタシがここ来たの初めてじゃない! 棘を含んだ高い声。うんざり顔の男。 (気持ちは分からなくもないがな。お前がするべき顔じゃない。) それに気を悪くしたのか、更に喚き散らす。 「服を着ろ」とは心の中で伝えておいた。れっつテレパシー。初対面の相手には通じない可能性大。 彼女は、他の男に裸体を見られて何も思わないのだろうか。 「うるせェ、」 低い、ドスの効いた声。 「……萎えただろーがよ。どけ。さっさと帰れ」 <<Retune? |