▼4 ほんの少しの距離だ、会話なく歩いても気まずさはなかった。幼なじみだからかもしんないけど。 「じゃ、また明日な、」 「ん、また」 玄関の門を開けて、扉のすぐ前まで来てから、大きな傘を抜け出した。 ポケットから鍵を取り出し、いつものように玄関の鍵を開ける。 「宏弥、」 名前を呼ばれて振り向いた先。見えたのは目を閉じた圭明の顔で。 (近、……、) 少し押し込まれるような感触。 圭明の背中が遠くなるのをぼけっと見て、重大なことを見逃していたことに気づいた。 「やり逃げ、って……、」 唇に残った柔らかな感触を思い出して、柄にもなく顔が熱くなっていることにも気がついた。 圭明はいっつもこう。 俺が騙そうとしたら、それ以上の意地悪で騙してきたりして。 でもこれは……。 ただの冗談では済まされねぇよ、うん。 <<Retune? |