ほんの少しの距離だ、会話なく歩いても気まずさはなかった。幼なじみだからかもしんないけど。

「じゃ、また明日な、」

「ん、また」

玄関の門を開けて、扉のすぐ前まで来てから、大きな傘を抜け出した。
ポケットから鍵を取り出し、いつものように玄関の鍵を開ける。

「宏弥、」

名前を呼ばれて振り向いた先。見えたのは目を閉じた圭明の顔で。

(近、……、)

少し押し込まれるような感触。
圭明の背中が遠くなるのをぼけっと見て、重大なことを見逃していたことに気づいた。

「やり逃げ、って……、」

唇に残った柔らかな感触を思い出して、柄にもなく顔が熱くなっていることにも気がついた。

圭明はいっつもこう。
俺が騙そうとしたら、それ以上の意地悪で騙してきたりして。
でもこれは……。

ただの冗談では済まされねぇよ、うん。
<<>>

<<Retune?
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -