「この傘とその傘、換えっこしないかね?」

なんで、との返事に、問題が生じた。
理由なんて言えるわけねぇ……。

「お、おっきい傘がいい、から!」

とっさに出てきたのはふざけた意見だった。圭明も同じことを思ったらしい。
大爆笑している。
(拗ねるぞ、こら)

「んじゃ、俺のとこ入れよ」

「ふぁ?」

返ってきたのは思ってたのと全然違う言葉で、思わず変な声が出ちゃいました。チャンチャン。
……じゃなくて!!

「一緒に入れって。大方、その傘使いたくなかったんだろ?」

そう言って、傘をほんの少しだけこっちに突き出した。

「う、」
(くそ、ばれてる……)

眉間に力を込めて見上げたら、いじわるな顔で見下ろされた。
なんつー性格してやがんだ。ちょっとは俺を立てろっての!

「どうしてもってなら、入ってやるよ、」

青い傘を傾けて圭明の隣、傘の下に入ってから傘を完全にたたんだ。
それから軽く傘を振って、雫を飛ばす。片手で紐を手にして、器用に、…器用に…。

「……キヨくん、」

「なに、」

「傘巻いてくんない?」

傘の柄を圭明の方へ差し出して、女の子のマネして目を瞬いてみた。気持ち悪いのなんて承知の上だ。

「……ぶきっちょ、」

(うっせ!)
でも巻いてくれたのには感謝。笑われても感謝の心は必要なんだぞ!?
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