数メートル先を歩く男が右手に握る、黒い傘。

上を見上げれば、そこには雲一つない真っ青な晴天……。ではなく。右手から伸びる青い傘。

高校生にもなってこんな真っ青の傘を持つなんて、恥ずかしい。けど、家にある男物の傘はこれ一本だけだ。前使ってた傘は、友達と遊んでいたときにポッキリ逝ってしまった。
……チャ、チャンバラごっこなんかじゃなく、あれは立派な野球ごっこだから、勘違いしないように!

折れた傘は当日に捨てたっていうのに、しばらく続いたいい天気のせいで、昨日になってようやく傘がないことに気付いた母さんが買ってきた傘がこれだ。ちなみに近くのくそ小さなスーパーで、だ。

(なんてことない……。)

買ってきたのも選んだのも、俺じゃないんだから。
そう思い込もうとしているのに、朝からクラスメイトに何度もはやしたてられる。茶化すだけ茶化すと、何もなかったかのようにさっさと群れで帰ってしまった。
(なんなんだ、)

前を歩く幼なじみは、そんな俺を助けることも、振り返ることすらもなく一人で歩いて行く始末。
(薄情者め! 恥かかせてやる!)
心に決めた俺は、さっそく行動に出た。

「よっす、キヨくん!」

「よ、……てかキヨくんは止めろって」

小走りで幼なじみの傍まで行って、挨拶と共に背中を軽く叩く。

「いやいや、キヨくんはキヨくんだし。」

"キヨくん"は小さい頃のあだ名だ。

「いつも圭明って呼ぶくせに」

そう言って左手の中指が額をつついてきた。

「ところでキヨくん。」

「なに?」

「これは提案なんだがね、」
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