▼2 冷たいコンクリートからの動かない衝動がその背中に吸収されて、亡骸とは反対側に、人肌。 手が突っ込まれたポケットから飛び出したのは違う銘柄のタバコ。ではなく。 「いる?」 持てとばかりに差し出された包み紙。 即答すると、今まで何度見たか分からない、あの顔。 「なんやねん、」 開いた包み紙の中には半透明なピンクのキャンディ。 「人の親切心、無碍にしたら怒られんで」 言葉とキャンディが舌の上で転がって、いまいちうまく聞こえない。 かろうじて拾えた言葉を繋ぎ合せて、なんとか文章に。 「誰にやねん、」 「言うただけやし」 なんやそれ。心の中で呟いただけのはずだったのに。どうやらそれは空気を振動させていたらしく。 キャンディで濡れた唇は不自然に突き出されていた。それを舌先でなぞるように舐めると、更に艶やかさを増す。 「あんっま……」 「ヤニくさ、」 何度も感触を楽しんだ後の顔は、お互い、苦笑いだった。 「ならちゅーすんなや」 「ちゅーしてきたん自分やん、」 「だって自分、普段飴ちゃん食べやんやん」 「もうなんでもええやん、」 聞き慣れた、ハスキーボイス。 不意打ちの後に見えたシルエットの頭部は相変わらず薄い茶色で。 「……どあほ」 自覚できるほど熱くなった頬を包むように撫でられて、もう一度唇を重ね合わせる。 「好きなんやからさ」 逆行になって見えない表情は、いつもと違って満足そうなんだろう。 <<Retune? |