▼5 「……ごめん。もう絶対にしねェから……別れるとか、言うなよ」 俺の知らない香水のにおいがする体で言うなよ。バカめ。 そんなの言われたって、 「信用できるかよ、バカ、」 ああ、しまった。こんな最低な野郎のために貴重な水分が溢れ出てる。しまった。 (鼻すすったら、泣いてんのバレっかな? ……いっか、付けちゃえ) 「てめっ、俺が今怒らねェのいいことに鼻水付けんなよ!」 「うっせ、黙れ。鼻水くらい、いいだろ、」 誰のせいだと思ってんだよ。 「ほら、ちゃんと拭け」 目の前にはティッシュ。受け取って溢れでる涙を拭う。 「バカか、」 体と同じにおいを漂わせているシャツは一部分だけ濃くなって。においの上から消すように何度も鼻をかんでやった。 呆れてのは見なくても分かった。 「付けすぎだっつの、」 (拭けつったから拭いたのに) ひどいと思った。コイツがモテる理由は顔以外に思いうかばない。 なんで好きなんだろう。 「……思う存分付けとけ。」 <<Retune? |