毎日こうして浮気現場を目撃して。いくら寛大な俺にも限界はある。
左頬がまだ、ジンジン痛む。胸が、ズキズキ痛む。

「俺、昨日言ったよな? 次浮気したら別れるって」

ズボンにかけていた、その手が止まった。忘れていたと、その背中が言っているような気がして。

「そんなもんだったんだ?」

怒りなんてものは通り越して、笑いさえ起こりそう。それなのに。

「泣くなよ、」

悪かったって、もう一度謝っても。

「黙れよ」

形だけ履かれたズボンが、ずり落ちそうになっている。片手に握られた、チャコールグレーのシャツ。
そんなものは見えるのに、顔が見えない。きっとちょっと、困った顔をしているんだ。きっと。目の前が歪んで、いまいち表情がうまく読み取れない。
ただ頭を撫でる手はいつもと変わらずおっきくて、暖かくて。たったそれだけなのに許しそうになった。

「もう、聞き飽きたって」

心地よい手を払いのけて、握り締めた拳はそのまま左頬へと。
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