▼4 毎日こうして浮気現場を目撃して。いくら寛大な俺にも限界はある。 左頬がまだ、ジンジン痛む。胸が、ズキズキ痛む。 「俺、昨日言ったよな? 次浮気したら別れるって」 ズボンにかけていた、その手が止まった。忘れていたと、その背中が言っているような気がして。 「そんなもんだったんだ?」 怒りなんてものは通り越して、笑いさえ起こりそう。それなのに。 「泣くなよ、」 悪かったって、もう一度謝っても。 「黙れよ」 形だけ履かれたズボンが、ずり落ちそうになっている。片手に握られた、チャコールグレーのシャツ。 そんなものは見えるのに、顔が見えない。きっとちょっと、困った顔をしているんだ。きっと。目の前が歪んで、いまいち表情がうまく読み取れない。 ただ頭を撫でる手はいつもと変わらずおっきくて、暖かくて。たったそれだけなのに許しそうになった。 「もう、聞き飽きたって」 心地よい手を払いのけて、握り締めた拳はそのまま左頬へと。 <<Retune? |