向けられたのは俺ではなく。
華奢な体は肩を押されただけでバランスを崩した。可愛らしい声を上げた割りに不恰好な体勢の女に構うでもなく、男は立ち上がる。

「バイトは?」

「なくなった。」

言葉通り萎えた一物を隠すでもなく、全裸の体を柱で支えて、舌打ち。

「なんだよ……そういうことは早く言えって」

無駄な時間過ごしちまったじゃねェか。そう言ってもう一度、舌打ち。

昼間から盛ってる野郎に言う必要はないだろ。
恋人がいるにも関わらず、声が聞こえるって分かってるだろうに、毎日、毎日、飽きもせず。違う女を部屋に連れ込んでセックス。そんな性欲だけの野郎に。
(言う必要なんて。絶対に、ない。)

「いつまでいる気だ! さっさと出てけ!」

体を震わしたのは、ベッドの上でのろのろと服を着ている女だった。俺たちの様子を伺っていたせいか、いまだにスカートの一枚も履けていないでいる。
一度俺の顔を見て、手を早める。そう長くない無言の合間に、彼女は服を着終えた。
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