2人きり JK

外では35度を超える暑さを太陽が容赦なく注いでいるというのに。
俺たちは汗ひとつ流していない。

「だからな、」

逆さま向いた文字をなぞって、ついさっきと同じ説明をもう一度繰り返した。ついさっきと同じ、難しい顔と唸るような相槌が返ってきた。

「分かったか?」

同じところから視線を動かさないまま小さく唸り続ける要を見て返事を求める。

「……もう一回、やってみな」

分からなかったらまた説明してやるからさ。
柔らかい癖毛を撫でて、その頭が動くのを確認した。

カリカリ、カリカリ。

いくつもの炭素が削れていく音が辺りに響く。
なのに。
目の前からはいっさい聞こえず、さっきから一定の動きを見せているのは見当違いの頭で。
(やる気あんのか、)
半分くらいまで黒く埋まったテキスト。
「勉強しよ」その一言に付き合っているのに。テキストの進み具合は俺の方が俄然早い。

跳ねた毛束のひとつを軽く引っ張ってみる。
(……起きん)
指先が少し跳ねただけで、睫毛の一本も瞬かなかった。勝手に起きるかな。続きの問題に視線を落とす。

「、」

シャーペンが紙に触れた瞬間、小さな声が聞こえた。その一言が誰に向けられたものか分からない。
視線だけでその声を見ると、同じ視線が返ってきた。

「起きんの遅い」

「顔真っ赤、」

口を開いたのは同時だった。
そして被さった言葉に自覚する。
(はっず……!)
耳が熱い。

「……誰のせいだよ、」

ため息と一緒に呟く。テキストから無言の返事が返ってきた。

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