電車 KS

平日の朝から夕方は俺のもの。

「うっす、」

「うい」

朝はそれから始まる。学生の挨拶なんて、そんなもの。
何てことない会話をして、授業受けて、飯の時間。初めは二人っきりだなんて慣れなくて、どうしたらいいか分からなくて、どぎまぎしてた。

「今日やきそば、」

「黙って食え」

屋上で昼飯なんて青春、できたら良かったんだけど。あいにくこの学校は屋上への立ち入り禁止で。
仕方ないから中庭のベンチで向かい合って、喋りながら食う。
自然に食えるまでになった。

「ごち、」

それからまた午後の授業を受けて、そんで解散。同じ服着た人の群れと一緒に駅に向かう。

「一緒に帰ろう、」

なんて今はもう言わなくても、隣を歩いてる。それが当たり前で、でもそれを実感する度に胸があったまる。

「な、」

「なに、」

学生の帰宅ラッシュで座れなかった。窓から風景が後ろに流れるのを見ながら声をかけた。

「今日帰んの、」

広告の文字を読みながら、いつもと同じ調子の返事が返ってくる。

「……帰んなよ」

男同士でこんな会話おかしいなんて自覚してる。
窓と顔の隙間に見えた、耳に顔近づけて小さな声で言った。

「い、っ!」

動けないのがこんなに悔しいなんて! 思いきり踏まれた右足がひどく痛む。
(本気じゃねぇか……!)

「今日デートだって、昼言っただろ」

声に怒りは感じられなかった。

「……デートの前に、」

一発どう? 一度攻められた耳は二度目も無防備。体の後ろに手を回して、割れ目に反って指を這わせながら言った。

「……痴漢プレイ、」

「要がいいならそれでも、」

邪魔な鞄を肩から下ろして、左手で腰を、シャツの中に右手を滑り込ませて考えてる要を見た。

「バレないように、ね?」

(きた、)
自分の顔が緩むのが分かった。

「それは要次第」

相変わらず無防備な耳に舌を這わせれば、体が小刻みに震えるのが伝わってきた。耳元で、必死に息を殺しているのもバレバレだ。
アイツがいない今だけ、要は俺のもの。
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