▼バレンタイン JKS 朝学校に行ったら、靴箱に見知らぬ箱が入っていた。さすがにそれはないだろうって、思ってた。 でも開けたらその通りで。 (靴臭くなるじゃん、) 廊下のごみ箱に投げ捨てた。 「プレイボーイは違うね、」 「お前に言われたくねぇよ」 (てゆうか何でここにいんの、) 後ろにいたのはスポーツバッグの蓋を閉めていない男。閉められない男。 「バレンタインに合同試合って、……なぁ、」 しかも朝から。そう言って苦笑い。それすら決まって見えるんだから、納得しざるを得ないわけだけど。 「愛しの恋人ちゃんからは、」 「もちろん、」 これだけモテる男が、溺愛する恋人がいる。 「城生!」 腰に抱きついて、嬉しそうに城生を見つめて。可愛い顔して、柔らかい髪の毛揺らして。……でも、男。 要は城生が好きで、城生も要が好きで。 ……俺も、要が好き。 「あ、重玄にもあげる、」 ポケットから取り出された小さな包み。かの有名な二十円チョコ。 (まぁ、そうだよな、) 「俺からもやろうか、」 鞄から一つ、適当に手に取って笑顔で差し出されても。 いらねぇし。城生のつっても城生のじゃねぇし。バカじゃん。 「いんね、」 手を振ってお熱い二人から離れた。左手にはちゃっかり小さなチョコ。ごみ箱になんて入れらんねぇわな。 <<Retune? |