そんな、調子のいい試合だった。

2点差でこちらがリード、とはいえまだ油断はできない。教員もこの試合を満足そうに、おもしろそうに見ている。

勝手にボールを蹴り合って円陣サッカーをする者もいれば、コートの脇に座って応援の太い声をあげる者もいる。
僕がそれらに気を取られている内に、気づけばサッカーボールは既にセンターラインから半分以上こちらへ向かっていて。
ボールをめぐった争いが、人間の塊を作っていた。
そのうち、1本の足が、確実にボールを捉えた。ゴールから1メートルとない至近距離で上がったボールは、一直線にゴールへと向かう。

脇から上がる歓声と、目の前の唖然とした人々の顔がスローモーションで見えた。

「!」

訪れたのは更なる歓声。だが試合をしていた誰も、嬉しそうな顔はしていなかった。
不安げな、心配そうな。
(なんで、)
状況を理解するのは早くなかった。いつもより低く、片方だけぼやける視界は、猛烈な吐き気を連れてきた。

「大丈夫か、」

「ごめんな、」

「保健室行くか?」

そのどれにも首を動かさなかった。少しでも動けば、せり上がる吐き気を抑えきれずにばらまきそうで。奥歯を噛みしめてようやっと、心配ないと片手でジェスチャーした。

その日、片目の視界はほんのわずかにぶれていた。
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