▼5 「どこか痛いところは?」 「左目か頭を強く打ったことは?」 そのどちらも同じ答えだった。 そうして医師たちは一様に不思議そうな顔をして首をひねり、同じとこを言った。 「倒れたときに頭を打ったのかも」 レントゲンで撮った画像とCTスキャンの結果を照らし合わせてまた、首をひねる。 わずかに偏った一部の脳が、左目の神経を圧迫しているらしく。それが原因で失明。 一見筋の通った話に思えるのに、なぜ首を傾げるのか。頭の中いっぱいに浮かんだ疑問符に気づいた医師は、いやね、と話を続けた。 素人にも分かりやすく、選ばれた言葉たち。相槌は打ったものの、専門知識のない僕にとっては、分かりづらいものだった。 「もう一度聞くけど、」 イスをゆっくりと回転させるのに合わせて、髪が微かに浮いた。歳を感じさせる白髪に、忘れかけていた大学の存在を思い出した。 (そういえば、倒れたときに運んでくれたのは誰なんだろう) 「左目か頭を強く打ったことは?」 何度も繰り返された質問。違うのはひとつ。僕は口を開いていた。 <<Retune? |