去年より長い夏休みが終わって、久しぶりの講義。

一般教養だかなんだか。
興味のない講義はあくびを殺せないほどに退屈極まりないもので。
白髪混じりの髪とはミスマッチな長身の講師が、白いチョークで文字を書きながら淡々と説明し続ける声。それを子守歌に爆睡している生徒、多数。

何度目か分からないあくびのあと、手元の携帯に目をやると、ゲーム画面がひどく歪んで見えた。

(え、)

理解するより先に、視界は暗転した。



【眼帯】




真っ白な、天井。

体が、ひとつひとつと覚醒していくのがよく分かった。視覚、聴覚、嗅覚、感覚、味覚……。
そうして覚えた、違和感。
何度まばたきしても拭い去れない。

「母さん、」

握られた左手と、驚いて顔を上げる母の顔。心配そうな、顔。
(ああ、きっと、更に心配させるんだろうな。)
でもさすがに、これは。

「……見えないんだ、左目」
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