「何か、頭痛ぇ」


ソファに寝転がり、自堕落にジャンプを読みながらふと自身の体のダルさに気が付いた。
ともなって頭も痛いっつーか、重いっつーか。
腹出して寝た記憶はないけど、風邪でもひいたかねぇ。何て考えていれば、机を挟んだ向かいのソファから何か聞こえてきた。

「キスでもしてやろうかぁ?」

頭沸いた台詞が。

「は?頭痛ぇっつってんのに何でいきなりキスとかゆってんの。受け答えとしてオカシクね?あと、当然のように座ってられると腹立つんですけど」

いつの間にやら居座っている相手に、雑誌から目を離す事なく言葉だけ返す。
てか本気で何時来た。朝は居なかったハズだ。

「知らねぇのか?キスはモルヒネの10倍鎮痛効果があるらしいぜぇ?」
「知らねぇよ。初耳だしどうでも良いわ。てか、スルーか。銀さんの発言まるっと無視ですか」

受け答えるから相手も付け上がるんだ。解っていても突っ込まずにはいられなかった。
チラリと相手を流し見る。
ぁ、見るんじゃなかった。ムカつくはそのドヤ顔。

「ぁ?無視はしてねぇだろ。如何にしてその受け答えになったかの理由を教えてやってんじゃねぇか。ンなことよりほら、モルヒネ10倍の鎮痛効果ってヤツを試してやるよ」

流し見た際に一瞬目があった相手は、ゆっくりと立ち上がりながら不穏な事を言い出した。

「いやいや、いらない!銀さん頭痛くなくなったから!もう大丈夫だから速やかに帰ってくれる?」

間の机を踏み跨いで近付いてくるヤツに、流石に慌てて雑誌から目を離し僅かに体を起こしたところでのし掛かられた。
頭の両脇に手を付かれ、とりあえず起き上がれない。

「…痛くなくなったなら、労ってやる必要もねぇわけだな」
「ちょっ!待って待って待って!何か近いよ?ものっそ近いよ!?」
「労ってやる必要がねぇなら、抱き潰しても構わねぇだろ」

ぐいぐいと近付いてくる高杉を、手と足使って押し返しながらも、体勢が体勢なだけに明らかに此方の方が不利だ。
バサリと床にジャンプの落ちる音が聞こえる。

「いやいやいやいや、構うよ!てか銀さんやっぱり頭痛いな、うん。だから労って退いてくれると嬉しいな!」

180度意見を翻して、退くように訴えてみたところで、野郎はニヤリと笑うだけで。

「ほぅ?…痛ぇなら仕方ねぇ。鎮痛剤代わりにキスだけにしといてやらぁ」

然も、仕方なさそうに。此方の我が儘を聞いてやったと言わんばかりにの表情で。溜め息まで吐きやがった!
何こいつ!イラっとするんですけどっ!

「違っ!そーゆー意味じゃねぇよ!切実に退けって…っんぐ」

苛立たしげに怒鳴り散らそうとすれば、言葉は途中で遮られた。
あーあ、コイツほんっと人の話聞かねぇよ。世界は自分を中心に回ってると信じてる中二以外の何者でもねぇよ。

開いていた口に潜り込んでくるざらついた舌の感触と、上顎をなぞられた時のぞわりと腰骨から項まで駆け抜ける感覚に、我知らず浮いた腰の隙間に片腕を通される。
押し返していたハズの足は間にヤツを挟むように膝立たせ、両手は相手の着物を掴む。

「ん…ゃめっ!…んぁっ、はっ…」

此方がどれだけ息苦しかろうが、貪るように口内に舌が這い回り、縮こまるように引っ込めた舌を付け根から絡めとるように吸われ。たまに舌が退いたかと思えば、間に銀糸をひく間もなくどちらのものともつかない唾液で濡れそぼった唇を相手のそれで食まれ、また深く合わさり。

「――…っ……ふあ、ぁ…」

段々と酸素不足で脳が働かなくなってきたころに、漸く解放された。
熱を孕んだ吐息が漏れる。

「クク。どうよ?痛みは退いたか?」

相変わらず上から見下ろされながら向けられる顔には、俺の言うことなんざお見通しとでも言わんばかりの笑みが浮かんでいて。
ヤツの思い通りになるのは癪だが、欲しいもんは欲しいわけで。

「…………まだ、痛ぇ」

せめてもの仕返しに、掴んでいた着物から手を離し高杉の首に絡ませれば、思い切り甘ったるい声音で誘うのだ。





――――――――――

は、はずかしぃぃぃぃぃ…orz
ちゅーを書くのがまさかこんなに恥ずかしいとは思わなんだ!電車内で書いてるせいもきっとある!

キスにはモルヒネの10倍の鎮痛効果があると聞いて、妄想が爆発しました。
痛み止めと称してキスを迫れば良い!ちゅっちゅすれば良い!

お粗末さまでした!


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