現在時刻午前2時。
未だに自宅に帰れません。


そもそもの原因は、人の腕の中を占領して優雅に爆睡扱いてらっしゃる名探偵殿が原因と言えなくもないものの、それ以上に住んでいる家が曲者だった。

ビルの屋上から下に降りた時点で既に2度目の睡眠に入ったらしい名探偵殿。それでも彼の家は知っていたし、送ると言ってしまった手前、自宅まで送り届けるのが筋だろうと自宅に向かったまでは良かった。
否、自宅の前に立つまでは良かった。

それが、門扉を開いた瞬間覆ったのだ。


「い、いい加減家に入りたい…」


名探偵殿を腕に抱えたまま、思わず泣き言だって漏れ出るってもんだ。

門扉を開いた瞬間からそこは戦場。セキュリティーには行き過ぎた寧ろトラップ。今更地雷が埋まっていようと驚かない自信がある。

付けたくなかった自信だが。

そもそも、家主を抱えている人間に対して行使して良いレベルの罠じゃあない。
うっかり罠とか言ってしまったが、それ以外に言いようがないからそれで押し通すとして。

石畳を踏んだ瞬間に地面に大穴が開いたりなんて序の口で、ついさっきは頬の真横をレーザーのようなものが掠めていった。若干焦げ臭いのは、気のせいだと思いたい。

名探偵殿が家を空けていた期間、こんなトラップはなかったハズだ。
侵入済みの自分が言うのだから間違いない。

ともすれば、十中八九お隣さんの仕業であろうとは思うものの、逆にここまでされる謂われはないはずなのだ。親切心で送り届けにきたのだから。
寧ろ、両手を広げて歓迎してくれるくらい………ないな。ない。

それにしたって、これでは確実に敵認識ではないか。
怪盗などという体力勝負の副業をこなす自分だから、まだどうにかかい潜って行けるものの、一般人は確実に死ぬレベル。
家主を送り届けにきた相手への扱いでは……そこまで考えてふと思い至った。

思い至ったというか、まさかそんなハズはという大層有り得ない理由。考えついて、いやまさかと一端は思考の端に追いやった理由。

だがしかし、もしかしてひょっとしてそんなバカなと思いつつ………。


まさか、名探偵殿の意識がないからだろうか…。

寝ているだけとは言え、弛緩した体は腕の中でぶらぶらしている。主に支え切れていない膝下部分が。
まさかそれを見て、名探偵殿に何かした不届き者=敵とかいった公式が成り立ってしまったのではなかろうか。
お隣さん、主に小さな科学者殿は、大層名探偵殿を大事にしてらっしゃるようだし…。


「………寝てしまった名探偵殿を、送り届けに来た、だけ、です、よ…」


ダメもとでそんな事を呟いてみる。

呟いた瞬間、家までの道がライトアップされた…。

本当に、本気で、名探偵殿の意識がなかったせいだったらしい。



当たったところで、精神的ダメージが倍増した目の前で、パッと玄関の電気が灯ったのだった。


――――――――――

怪盗とナルコレプシーな探偵。
戻って怪盗目線です。

さて、ストックがなくなったので次は一から書かなきゃです。
頑張ります。


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