------------ 高校生パロ ・高杉18歳 ・銀時17歳 ------------ 好きだと気付くのに、あまり時間はかからなかった 気がついたら好きだった ただそれだけの話だ 『気付かされた恋』 「………」 学校から帰宅して自室に入った高杉の目に真っ先に飛びこんで来たのは、己のベッドに寝そべり我が物顔で寛ぐ銀時の姿だった。 こういった彼の行動は日常茶飯事で、高杉もこれといって気にしたことはない。 それは彼らが幼馴染みであり、幼い頃から兄弟のように扱われてきたことが関係している。 だが今日は…と、高杉は苦笑を漏らした。 「……銀時」 「んー?」 「今日は帰れ」 「え、なんで」 「いいから」 「待ってこの漫画まだ読み終わって「晋助ぇ、まだぁ?」 最後まで言う前に、女の声が銀時の言葉を遮った。驚いて振り向くと、見慣れない女が高杉の腕に絡み付いている。 女は上目遣いで高杉見、甘えた声で『晋助』と呼んでいた。銀時は驚きのあまり声が出ず、二人を見ていることしか出来ない。女は銀時に気付いて視線を動かすと、目が合うなりにっこりと微笑んだ。 「あっれー、晋助って弟いたの?」 「弟じゃねぇよ。似てねぇだろが」 「んー……確かに似てはないかも」 「だろ?ただの幼馴染みだよ」 「へー、そうなんだー」 困惑する銀時を尻目に二人の会話が弾む。見知らぬ女を見て一瞬と惑った銀時だったが、こんなに優しく笑っている高杉を見るのは久しぶりだと、心の中でそう思った。 「銀時」 「へ!?」 「俺彼女出来たから」 淡々と言い放った彼の言葉に目を見開いた銀時だったが、頭の中では「あぁ、やっぱりか」と何処か冷静な自分がいた。そんな、情況を判断していく自分に銀時は苦笑する。何処か冷静な自分がいるのは、こうやって高杉の彼女に会うのが初めてではないからだろうと銀時は思った。 「……へー…その子?」 俄かに震える声で言う銀時を鼻で笑い、「見りゃわかんだろ」と高杉は言った。その余裕に満ちた表情に、銀時は若干の苛立ちを覚える。だが苛立ちと同時に胸がズキリと痛んだ。 「……もうかよ。この前の彼女と別れたのだってついこの間だったじゃん」 「関係ねぇよ、そんなの。つか、そんなこと今言うなっつの」 高杉はククッと笑い、彼女の腰に手を回してぐっと自分の方へと引き寄せた。彼女も微笑みながら高杉に身を任せている。 見せびらかすような高杉の行動に、銀時は自然と眉間に皺を寄せた。 「………モテるやつはイイデスネー」 銀時が嫌味っぽくそう言うと、今度は高杉が口角を上げながら言う。 「何イラつてんだ、嫉妬か?」 「死ねバカ杉!!」 その言葉を最後に、銀時は急いで部屋を出て行った。 *** 「じゃぁな、土方」 「おー。またなー」 「明日は遅刻すんなよー」 「お前がな!!」 「はは、じゃぁな」 クラスメイトの土方と挨拶を交わす。いつもは高杉と帰っていたのだが、最近は土方と帰りを共にしている。自宅近くで別れて銀時が歩き出した瞬間、いきなり後ろの方へと腕を引っ張られた。 「!?ってぇ!!」 あまりにも突然過ぎたそれに、銀時はバランスをくずして地面に尻餅をつく。 急いで後ろを振り返ると先ほど分かれた筈の土方が立っていて、文句の一つでも言おうとした銀時だったが、口を開く前に土方によって無言のまま路地裏へと引き入れられた。 「ちょ、何すんの!痛えーじゃねーか!!」 「静かにしろ。あそこにいんの、お前の幼馴染みじゃね?高杉先輩だろ、あれ」 「え?」 土方の言葉に銀時は心臓が大きく跳ねる。高杉とはあの日以来会っていない。気まずいというのもあるが、会う気がしなかったからだ。 銀時はおそるおそる土方が指す方向を見やる。 「……たかすぎ」 土方の言うとおり、そこには確かに高杉がいた。 そこには高杉の部屋で会った女も一緒で、二人は高杉の家の前で向かい合っている。 「あの女、彼女か?」 「ああ…」 銀時達が見ているなんて知るはずもなく、しばらく見つめ合った二人は後に口付けを交わした。 「……っ…」 「大胆だなあいつら…」 ……そっか。彼女が出来たのだからそういうことだってするに決まっている。 あいつは昔からモテたから、あの女の子が初めてというわけでもないのだろう。 俺は…ただの幼馴染み。 「……ただの、幼馴染み…なのに……」 なんで、こんなに胸が痛いんだ 銀時は胸に手を当ててぎゅっと服を握り締めた。そんな銀時の様子を土方はじっと見つめている。 「坂田、どうした?大丈夫か?」 「……」 「坂田?」 「……大丈夫だ」 「………ならいいけどよ。あの二人、家に入って行ったぜ。今なら先輩に会わねーで済むんじゃねーか?」 「そう……だな…」 土方の声が、ずっと遠くから聞こえた気がした。 -------------------------- |next |