溺れる気持ち

※桜さまリクエスト
※「才鎌/とりあえずイチャイチャ」




長閑な昼下がり。勇士が勢揃いしてからは何かと騒がしい上田城も今日はとても静かだった。

騒がしい人物の筆頭である鎌之介は、縁側に座って空を眺めている。流れていく雲を見送っては、次の雲を見つめ始める。特に実りのある行動ではないが、それでも鎌之介はずっとその動作を繰り返していた。

しかし時折鎌之介は自分の膝を見下ろす。正確には、膝に頭を預けている才蔵を見下ろしていた。

初めは鎌之介しかいなかったのだが、突然才蔵がやって来てごろんと縁側に転がり、寝息をたて始めたのだ。

いわゆる膝枕というものを、才蔵は鎌之介にしてもらっていた。

普通男の膝というのは固くてとても快適とは言えないはずなのだが、鎌之介の膝は女なのではないかと疑ってしまうほどに柔らかい。当初は寝るつもりがなかった才蔵も、いつの間にか気持ちよさそうに寝入っていた。


「……………」


空から視線を外した鎌之介は、才蔵の顔を覗き込む。仰向けで寝ている才蔵はとても用心深い忍とは思えないほどに無防備だった。それが自分に対する信頼の証でもあると知っていたから、鎌之介は小さく口元を綻ばせる。

右手で才蔵の前髪を梳く。微かに日向の匂いがした。さらさらと揺れる黒髪に視線を奪われていると、右手首を掴まれる。鎌之介は驚いて身を引くが、その動きはすぐに止まる。才蔵が鎌之介の頭に手を置いたからだ。

才蔵、と名前を呼ぶよりも早く頭を引き寄せられる。そして、唇が重ねられた。


「……ん……っ」


だんだんと深くなっていく口付けに鎌之介は酔いしれる。自ら舌を絡めれば、才蔵はその求めに応えてくれる。

やがて唇と後頭部に回されていた手が離れていき、才蔵と目が合う。彼の瞳は穏やかに細められていた。


「はぁ……っ。才蔵、急にどうしたんだよ…?」


寝ていたかと思えば突然口付けをされて。驚かないはずがない。
余韻に浸りながら問いかける鎌之介に、才蔵はにっと笑ってみせる。

次の瞬間、膝の上の重みが消えた。そして視界が大きく変わる。先程までは才蔵を見下ろしていたのに、今は逆に見下ろされていた。


「才、蔵……?」
「ああ、やっぱり」


鎌之介を縁側に押し倒した才蔵は、再び軽く口付けをする。


「見下ろされるより、見下ろしてる方がいい」


情事の時の体勢を仄めかされた鎌之介はボッと顔を赤く染める。その姿さえもが美しく、そして何より可愛らしい。

才蔵は小さく微笑んでから、三度目となる口付けを贈った。


120629

桜さま、リクエストありがとうございました!




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