※やぎさまリクエスト
※「半蔵と♀鎌之介が兄妹設定/ヤンデレ半蔵が鎌之介を狂愛していて鎌之介は才蔵に片想いしてるお話」
※学パロです
白く細い腕をねじ伏せれば、柔らかそうな唇から微かな呻き声が洩れる。それさえも腹の底に溜まる欲望を刺激するようで、半蔵は口元を妖しく歪めた。
「また、才蔵とかいう男と喋ってたデショ?」
自分と同じ赤髪を持つ、何より愛する妹を見下ろす。ベッドに押しつけられた少女は痛みに顔を顰めながら、馬乗りになる兄を見つめた。
「…見てた、の」
「ええ。ばっちり」
その答えに、妹―――鎌之介は静かに目を伏せた。
半蔵は高校3年生で、鎌之介より2歳年上だ。同じ高校といえども学年が違うから、才蔵と共に居る場面など見られていないだろうと油断していたのがいけなかった。
鎌之介は同じクラスの霧隠才蔵に恋をしていた。粗野な物言いの中にも優しさがあって、強くて、まさに鎌之介が理想とする人間だったのだ。そんな才蔵に鎌之介が恋心を抱くのは自然なことだと言える。
だが、それを良しとしない人物がいた。鎌之介の兄の半蔵だ。半蔵は鎌之介を狂愛していた。鎌之介に触れた男がいれば、その男を立ち上がれなくなるまで傷つけたり、鎌之介と少し会話を交わした男には執拗な嫌がらせをしたりと歪みに歪んでいた。
鎌之介は兄が嫌いではなかった。むしろ好きだった。優しくて、強くて、頭が良くて。自慢の兄で、大好きだった。
それなのに。
いつからだろう。そんな兄が怖くなったのは。
「鎌之介」
半蔵に名前を呼ばれてビクリと身体が震える。片手だけで拘束されてしまった両腕を動かそうとするが、全く動かない。きっと手首には半蔵の手の痕がくっきりと残っていることだろう。また痕を隠して学校に行かなければならないのかと思うと気が滅入る。だが、今から行われるであろう行為を考えればそれはただの些事に変わる。
「今度才蔵と喋ったら……オシオキだって言いましたよね?」
スッと細められる瞳。欲に歪んだその瞳に見下ろされることにはもう慣れた。初めてその目を向けられ、行為を強要された時は怖くて悲しくて一日中泣いていたが、今では何とも思わなくなっていた。何故なら、この可笑しな行為はほぼ毎日行われているのだから。
「鎌之介」
ああ。この声が、この手が。才蔵のものだったらどれほど良かっただろう。才蔵に鎌之介と呼ばれて、微笑まれて。優しく抱いてもらえたら、どれほど幸せだっただろう。
「や、ん……っ、」
痛い。押さえつけられた腕も、噛みつかれた首元も、そして心も。どうしてこんなことになってしまったのだろう。兄は―――優しかったあの兄は一体どこに消えてしまったのだろうか。
「ひ、ぁ、だめ、」
才蔵に会いたい。あの大きな手で頭を撫でて欲しい。名前を呼んで欲しい。愛して、欲しい。
「才、蔵」
その名を口にした瞬間、服を引きちぎられた。そして頭を掴まれ乱暴に身体をベッドに押し付けられる。
「アイツの名を呼ぶな」
半蔵の瞳に映るのは嫉妬と狂気の色だった。こうなることは分かっていたのに。また才蔵の名前を呼んでしまった。彼の名前を呼んだのは、ほぼ無意識だった。心が無意識に、才蔵を求めていた。
「鎌之介。貴方は私のモノなんデス。私だけの、鎌之介なんデスよ」
そう言って、半蔵の唇が鎌之介のものと重なる。乱暴に与えられるキスは気持ち良くなかった。鎌之介は生まれてこの方気持ちの良いキスなどしたことはなかった。きっと才蔵とのキスなら気持ち良いのだろう。鎌之介は酸素不足で霞んでいく意識の中、才蔵、と愛しい男の名を呼んだ。
その声は、誰にも届くことはなかった。
120611
やぎさま、リクエストありがとうございました!
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