熱に溺れる

※天使満月さまリクリスト
※「才♀鎌でラブラブで混浴の温泉に一緒に入る」
※女体化が苦手な方はご注意下さい




「うおお、すっげー!」

立ち上る湯気に静かな水の音。周囲は人の気配などなく感じるのは木々のざわめきと微風の吹く音。鎌之介と才蔵は幸村秘蔵の温泉を訪れていた。
幸村から「暇をやるから二人で温泉にでも行ってこい!」と言われ、遥々やって来たのだ。当初の予定では他の勇士たちも共に来る予定だったのだが、才蔵と鎌之介に気を利かせたのか誘いを辞退したのだ。

鎌之介は温泉を前にして無邪気にはしゃいでいる。風呂が好きだという話は確かなようだ。戦闘中に見せるものとはまた違ったはしゃぎように才蔵は微笑する。鎌之介が楽しそうにしている姿を見るとこちらまで嬉しくなる。恋人が望むことであればなんでもしてあげたくなってしまうのだ。


「才蔵! 早く入ろうぜ!」
「おう」


温泉といっても商業目的のものではないようで、自然な形のままを保っている。だから以前幸村に連れて行かれた温泉にあった男女を分ける衝立や脱衣場といった人工物は存在しない。服を脱げば即座に入れるような実に開放的な温泉だった。
鎌之介は時間が惜しいとばかりに服を脱ぎ始める。才蔵以外の人目がないのをいいことに堂々と服ぎ捨てる。その豪快な脱ぎっぷりに才蔵はギョッとした。


「馬鹿! お前もう少し隠せよ!」
「はぁ? 別に裸なんて見慣れてるだろ?」
「そりゃあそうだが……」


何というか、鎌之介には恥じらいというものが欠けている気がする。勇士たちで酒を飲んだときなど酔っ払って服を脱ぎだしたこともある。才蔵が慌てて止めていなければとんでもないことになっていただろう。そのくせ愛を囁くと顔を真っ赤にして照れまくる。付き合い始めてそれなりの時間が経つが未だに鎌之介のことは良く分からない。
あっという間に裸になった鎌之介は「お先にー」と才蔵に構うことなく温泉へと入っていく。ついつい鎌之介の白い肌と女らしさを感じさせられる細くしなやかな身体に見入っていた才蔵は慌てて服を脱ぎだした。

温泉はとても温かく快適な温度だった。鎌之介は満足そうに肩まで浸かっている。解いた朱髪は小さく波打ち、頬は火照ったように薄紅色に染まっていた。服を脱いだ才蔵は鎌之介の隣に浸かる。幸村が絶賛するだけのことはあって、温泉から見える景色は絶景だった。


「気持ちいー」
「極楽ってやつだな」
「才蔵、おっさんくさい」
「んだと!」
「あははは」


冗談を言っては笑い合う。こんな幸せな時間を愛する者と共に過ごせる日がくるなんて、才蔵は思ってもみなかった。しかし隣で可愛らしく笑っている鎌之介は確かに自分の傍にいる。そのことが才蔵をとても優しい気持ちにさせた。


「あっ、にょろ!」
「にょろ?」


突然鎌之介が前方を指差した。その先を辿ると水面からぴょこんと顔を出しているイタチのような動物がいた。成る程確かに佐助が飼っている雨春に似ている。しかし雨春がここにいるわけがない。あれは多分近くの森に住んでいるイタチなのだろう。
鎌之介は目を輝かせて雨春もどきに近付いていく。湯に浸かったまま移動しているため朱髪が流れるように水面に浮かぶ。どうやら雨春もどきにすっかり心を奪われてしまったらしい。鎌之介には雨春もどきしか見えていないようだ。それは才蔵としては面白くない。せっかく一緒に温泉に来たというのにイタチに鎌之介を奪われるのはつまらない。才蔵はゆっくりと鎌之介の背後に近付き首に腕を回して抱き締めた。


「ひゃっ!?」


非常に可愛らしい声が上がる。突然のことに驚いたのだろう。腕を解こうと身体を捩る。しかし才蔵は気にすることなくさらに鎌之介を引き寄せた。
お互い裸のため肌がじかに触れ合う。鎌之介の滑らかな肌の感触が身体を通して伝わってくる。才蔵は鎌之介の肩口に顔をうずめるようにしてそっと囁く。


「馬鹿。俺だけ見てろ」
「……………!」


鎌之介の顔がボッと赤く染まる。それは温泉に浸かっているせいだけではないのだろう。ああ、可愛い。才蔵は心が満たされていくのを感じた。
雨春もどきことイタチは既にいなくなっている。正真正銘の二人きりだ。こんな素敵な休日をくれた幸村に才蔵は心の中で感謝する。いつも無理難題を押し付けたり鎌之介に悪戯しようとしていることは水に長そうと思った。


「才蔵は、ずるい」
「ん?」
「いつも俺ばっかり、こんな……」


そう小さく呟いた鎌之介は才蔵の腕を静かに解くと向き合うようにして座り直した。自然と見つめ合う格好になる。鎌之介に上目遣いで見つめられた才蔵はドキリと胸が高鳴るのを感じた。すると、鎌之介がにこりと微笑む。天女かと思うほどに綺麗で優しい笑みだった。


「才蔵、だいすき」


急激に体温が上昇する。温泉なんかよりも自分の方が温かいのではないかと錯覚してしまうほどだ。絶対に顔が赤くなっている。真っ赤になった才蔵を見て鎌之介はころころと笑い出す。どうやら仕返しは成功したようだ。


「才蔵顔真っ赤ー!」
「う、うるさい! お前だってまだ赤いじゃねぇか!」


鎌之介の意図に気付いた才蔵は羞恥からさらに顔を赤くする。お互いに赤くなった顔を指差して指摘しあうが、暫くするとその声もなくなった。口を閉じてただ見つめ合う。そしてどちらともなく唇を寄せ合った。
熱い。唇が、手が、身体が。部屋の中で触れ合う時よりも熱く感じる。その熱に全てを持って行かれそうになる。才蔵は鎌之介の細い身体を抱き寄せ、心地の良い熱に身を任せた。




120225


天使満月さま、リクエスト有難うございました!



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