※五十嵐さまリクエスト
※「先天的女体化鎌/才+鎌でにょたバレ」
※若干…才蔵が……変態くさいです苦手な方はご注意下さい本当にすみませんでした
面倒なことになった。才蔵は溜息を吐きたくなるのを我慢して現実と向き合う。いま彼の行く手を阻んでいる存在こそが才蔵の悩みの種だった。
「おいこら才蔵! 俺とヤりやがれ!」
言うまでもなく鎌之介である。両手に腰を当てて一心にこちらを睨みつけてくる。しかし翡翠の大きな瞳で上目遣いに睨みつけられても全く怖くない。こいつ案外睫毛長いんだなぁとしか思わない。才蔵は溢れる溜息をぐっとこらえて鎌之介を見下ろした。
「断る。俺は忙しいんだよ」
「何で!」
「何でって…そりゃあ、物見とか、警護とか……」
「物見は金髪女がやってるし警護は緑がやってるだろ。だから才蔵いま暇だろ?」
才蔵は思わず瞠目する。他人に興味のない鎌之介が佐助たちが今なにをしているか把握していることに驚いたのだ。
「何でそんなこと知ってんだ?」
「さっき本人たちが教えてくれた」
「………あいつらぁぁ………!」
話は実に単純だった。退屈していた鎌之介にわざわざアナと佐助が才蔵の暇具合を知らせたのだ。悪意しか感じないその行為に才蔵は怒り震える。ぜってー後でシメる。心中で物騒なことを考えながら才蔵は鎌之介の額を指先で小突いた。
「いてっ」
「それでも俺にはいろいろあんだよ。他を当たれ」
「やだっ! 才蔵じゃなきゃやだ!」
「ワガママ言うなよ」
「言ってないっ」
しつこく食い下がる鎌之介に呆れが込み上げてくる。自分を慕ってくれるのは有り難いが、もう少し何とかならないものか。こんな廊下の真ん中でやだやだと駄々をこねられては目立って仕方がない。今は誰もいないがここにやたら暑苦しい清海や鎌之介に興味津々の甚八などが来たらさらに厄介なことになる。
才蔵はさっさと逃げ出そうとするが、鎌之介にばっと腕を掴まれ逃亡は阻まれた。
「おいっ!」
「逃がすか!」
「だーもう、しつけぇ!」
「うわっ……!?」
「は………!?」
逃がさないとばかりに才蔵の右腕を胸に抱え込んだ鎌之介がバランスを崩し背中から転倒する。それに引っ張られるようにして才蔵も鎌之介の上に倒れ込む。このままでは鎌之介が潰れてしまうと咄嗟に手をつくが、手のひらから伝わる違和感に才蔵は目を見開いた。
「あ、れ……?」
咄嗟についた手は鎌之介の胸の上だ。あの薄そうな黒い服を通して感じるこの感触。これは慣れ親しんだ男のものではなく。
「……お前、女……?」
「な、な、な、」
確認するようにさわさわと胸をまさぐれば、顔を真っ赤にした鎌之介がバタバタと暴れ出す。
「ばか才蔵っ! 触んな変態! すけべ! 色情魔っ!」
「へ、変態……!?」
少なからずショックを受ける才蔵。敵である半蔵公認の変態である鎌之介に変態と言われた衝撃は大きい。しかし今の自分の状況をよくよく考えてみれば確かにド変態である。なにせ事故とはいえ女である鎌之介を押し倒し胸を触っているのだから。
「あ、ワリィ……」
慌てて身体を退けて胸から手を離す。上体だけを起こしてその場に座り込んだ鎌之介は潤んだ瞳でキッと才蔵を睨みつけた。
「俺が女だってこと、誰かに言ったら殺すからな!」
「あ、ああ……」
胸を両手で隠すようにして言い募る鎌之介に才蔵はただ呆然と頷くしかない。しかし女だと思って見てみればもう女にしか見えない。赤髪も男にしては艶やかだし、翡翠の瞳は驚くほど大きい。身体つきもしなやかで、相当の美女であることが分かる。
こんな美女に今までずっとヤるだの何だのと言われ続けていたのかと思うと感慨深い。ただ一つ残念なのはそれが情交のお誘いではなく殺し合いのお誘いであるということだけだった。
「うううっ、最悪だ……!」
今にも泣き出しそうな顔で座り込む鎌之介をジッと見つめていた才蔵は、視線を合わせるようにしてその場にしゃがみ込む。驚いたように目を瞬く鎌之介に才蔵はキリッとした顔で一言。
「悪い」
「は?」
どういう意味だと尋ねようと開いた口から洩れたのは、疑問ではなく悲鳴だった。
「ひゃぁああ!?」
「あ、マジで女だわこれ……。」
短い服の裾から両手を突っ込み、直に鎌之介の胸に触れた才蔵は改めて女であることを確認した。この手のひらの柔らかい感触、間違いない。見た目だけではどうにも自信がなかったがここまですれば女だということを認めざるを得ない。少し欲が出て揉んでみた。やはりこれは女性特有の柔らかさだ。やっと明らかになった鎌之介の性別に才蔵は大満足だという顔で頷く。
しかし鎌之介はそうではなかった。服の中に無遠慮にも入れられた手に、ついに鎌之介はキレた。
「………が」
「あ? どうした鎌之介」
「こんっの、ド変態やろうがぁぁぁぁ!」
渾身の右フックが綺麗に才蔵の顔に決まり、彼は吹っ飛ぶ。まさに神速、あの才蔵が避けることさえできなかった。それはもしかしたら鎌之介の服の中に手を突っ込んでいたせいかも知れないが、とにかく素晴らしい一撃であった。
「才蔵のばか! 緑や小姓や金髪女や火縄のおっさんに言いつけてやる!ばか!」
そう言い残して鎌之介はその場から走り去る。才蔵はむくりと起き上がり、殴られた頬にそっと手を当てた。
「やっべー…、惚れちまったかも………」
鎌之介が言いつける相手として上げた名前は誰もが才蔵に死亡フラグを感じざるを得ない人選だったが、そんなことは今の才蔵には関係なかった。ただ、この胸を熱くする想いに笑みが零れる。
「逃がしゃしねぇよ、鎌之介」
かすかに残る温もりをギュッと握り締め、才蔵は鎌之介の後を追いかけた。
120221
五十嵐さま、リクエスト有難うございました!
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