昨日の任務が真夜中に終わり、いつ帰って来ていつ寝たのか覚えていない。だが俺が目覚めたとき、時計の針が今の時刻――午後三時過ぎを指しているということは、相当疲れていたんだなと自分に言い聞かせた。疲れてんだ、寝坊なんて今まで何回もしてきたっつーの。
寝起きのままのボサボサ頭で(でもティアラは忘れず!)談話室に入ったら、見事なまでに顔見知りが全員揃ってやがった。イラッとする前に呆れた。暇なのかコイツら。つーかなんでボスまでいるわけ。そんでもってソファーにでかいボロ切れがうずくまってやがる。何コレ、なんかクセェし。
「あー堕王子やっと起きてきましたー。」
「おせぇぞぉ!」
「うるせーよ。王子疲れてんの。」
前半はカスザメを、後半は生意気なクソガエルの方を見ながら言ってやった。腹減ったからいつもの習慣でフラフラと此処に来ちまったけど、やっぱムカつくこいつら。
「まぁまぁ、とりあえず座りなさいよ。」
ンフフと小指を立てながら笑うオカマ。今ご飯持ってきてあげるわね、と付け足されて、腹が減ってた俺は素直に従った。レヴィが鼻で笑ったのが聞こえたんでナイフを投げた。あー無駄に動かすんじゃねぇよ。
「ぬおおぉおっ!ベルきさまごへっ!!」
「るせぇ。」
…学習しねぇ親父だな。ボスの傍にいるくせに毎回毎回でかい声出しやがって。ボスのとばっちりが俺に来たらマジで消してやろーっと。
あぁ、そういえば。
「ボス、こいつ誰。」
こいつ、と言って俺が指を指したのはさっきのボロ切れ。というか、ボロ切れに包まっている…オンナ?と思われるガキ。
髪は今の俺よりボサボサだし、顔や体は汚れてるし、なによりドブクセェ。庶民っつーか、レスの奴か?
「ボスとロン毛隊長が拾って来たんですよー。」
俺はボスに聞いたのに、違う方から声がした。んだよこのカエル。てか、拾ってきた?捨て猫を飼うみたいなノリで言いやがった。マジで?って顔でボスを見れば、フンと目を反らされた。あ、マジだ。
「なに、ペットでも欲しくなったわけ?」
「んなわけあるかぁ!!」
呆れながらスクアーロに聞けば、怒鳴られた。いつもこんな感じだから怒鳴ってんのかわかんねーけど。まぁ別に、何拾って来ても俺には関係ね−し、元々おかしい連中だからいつかやると思ってたし。それよりも興味が湧かねぇ。
耳を塞いでスクアーロを無視していたら、いつの間にかオカマが戻って来ていた。
「はい、ベルちゃん。」
そう言って俺の前にカチャリと置かれた皿の上には、カットされたチョコレートケーキ。は?ナメてんのかコイツ。
「おいオカマ、なんでケーキなんだよ。」
「だって三時のおやつじゃな〜いっ?」
「ぶっ殺すぞ。」
クネクネと動きながら首を傾けるオカマ。確かに時間的にはそう言うけども、寝起きからケーキなんか食えるかっての!ここにボスがいなきゃ、今すぐにでもオカマをサボテンにしてやんのに。
『…ケーキ…。』
ボロ切れのガキが喋った。ガキ特有のくりくりした目で、俺の目の前にあるケーキを見つめている。おいヨダレ、ヨダレ垂れてんぞ。そこで俺はあ、と気づいた。
「食いてーの?」
『……。』
…あ!コイツ、王子が声掛けてやったっていうのにそっぽ向きやがった!コノヤロ……後でシメてやろうか…!
「さっきからこうなんですよねー。」
するとクソガエルが口を開いた。溜息つきながらはーとか言ってやがる。おいそれ本当に息出てんのか。
「ボスとスクアーロが一緒の時は喋るのだが、我々がいるとこうなってしまうのだ。失礼なガキめ。」
ソファーの上で体育座りして、ボロ切れに顔を埋めながらこちらを見る。めちゃくちゃ警戒されてんじゃね−かよ。まぁいきなりこんな大人数を目の前にしちゃあこうなるだろうな。たとえ知り合いが近くにいたとしても。
「単純で幼稚なベルセンパイだったらー、打ち解けるかなーって思ったんですけど…無理でしたねー。」
「その喧嘩買うぜっ。」
「ゲロッ。」
あんまりボスの前で騒がしくしたくないけど、どうしても押さえられなかったのでカエル頭にナイフを刺す。少しスッキリしてししっと笑っていると、視線を感じた。
『……。』
ボロ切れのガキだった。俺とケーキを交互に見てやがる。うっぜーな、なんなんだよコイツ。
「食いたきゃやるよ。どーせ俺食べないし。」
カチャリとケーキをそいつの前に乱暴に置く。せっかく持ってきてあげたのにぃっ!とオカマが吠えているが気にしない。あーそれにしても腹減ったー。肉とかねぇの?適当に食料庫漁ってくっかな。
ボロ切れのガキは俺が置いたケーキをただじーっと見つめていた。食わねぇのかよ。それともケーキが珍しいってか?レスのガキなら有り得なくもないが…。
ガキは何を思ったのか、腕を伸ばしてケーキを握った。そしてそのまま口に入れた。うへぇ、超食い方ワイルド。フォークくらい使えよな。
「ゔお゙ぉい!手が汚れるじゃねぇかぁ!フォークを使ええぇ!!」
スクアーロがものすごくまともなことを大声で注意した。何も言い返せない。だがガキはただモグモグと口を動かすだけだった。その間にも、ケーキは崩れ、ガキの膝や床にボロボロと零れている。
きったねぇと思いながら、俺は初めに聞くべきだろう質問を今ひらめいた。
「結局、なんでコイツ連れてきたの?」
「……新しい雲の幹部候補だ。」
ボスが俺を真っ直ぐ見ながらそう言った。ふーん。てことはガキなりに強いってことなのか。見た目からは全然判断できねーけど。
ま、ボスが連れ来たんだ。変に騒ぐより、ここは新しい仲間を不本意ながら受け入れるしねぇか。
……仲間とか、随分俺も丸くなっちまったな…。
思わぬ拾い物
『…フォーク…って、なに…?』
「あー…。」
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気が向いたら
続き書くかもしれない…!
ていうかなまえちゃん全然喋ってねぇし名前すら出てきてねぇ!
ちなみに最後の台詞はベルです(^ω^)
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