すべては完全な生活のために
愛しい嘘の吐き方と、優しい騙され方。
さようならの居場所を残して、寂しさを切り離す。だれかの記憶を書き換えたまま、僕らは自分勝手に忘れたがる。
この胸のなかで息絶えるように眠ったビビッドが熱を帯びて目覚め出す。再起の朝がやってきた。
おもちゃ箱へ向かうフラニー。おおきな冒険心とちいさな兵隊を引き連れて、深い深い森をゆくよ。
絡まる焦燥感を解く手はただ忙しなく、指先の傷ひとつすら痛々しく。
アールヴァクの太陽を待つ瞼は開かれている。知るべき始まりがここにあることを証明するため。
少年よ、軍歌ではなく賛美歌を歌おう。銃ではなく花を掲げよう。愛しきものがあたたかな大地へと還るよう祝福し、ときには涙を添えて。
あなただけのようだ。その自分への憎しみに満ちた精神世界の中でもがいているのは。
シルクの光沢を帯びた空を、パレードがよぎるのを見ただろう。あれはオーロラ、きみの影を飲み込みにきた怪物だ。
バルコニーに立つ蜃気楼の彼女。見え透ける静かな町が、とうに喪った記憶とあまやかな後悔を呼び起こす。
優しい言葉が突き刺さる。背中合わせの感情が教えてくれる。ほら、僕らの心は離れたがっているみたいだ。
泣いてください。そして、多くの感情が死んだ場所を忘れてみてください。もう出会うことのないふたりが幻となるまで。
気付いてるのでしょう?この痛みすら、あなたを振り向かせるための手段でしかないの。
明日のパターン、償還のオープンハート。明日には私のことを忘れているのだろうか? 受話器を置いて考えている。
小さな知覚がひしめき合っては消えてゆく。すべては完全な生活のために。