30番道路を、特に困難なく歩いていくスミレ達一行。スミレの右隣には人型のシズル、左隣にはキンカが並び歩き、頭にエンジで肩にはズバットだ。他所様から見れば、色々と豪勢過ぎる連れ歩きである。

しかし、誰一人としてボールに戻りたいとは言わないし、スミレも気にしていないので、そんな疑問点すら浮かばない。(寧ろ、異世界トリップ組は、何故ゲームだとポケモンをわざわざボールに戻すのか不思議だった)


「そういえば、さっき少年達がバトルしてたね」

「・・・だね」

「・・・シズルもしたい?バトル」

「・・・・・・・・・・・・」

「だよねー・・・・・・」


シズルが何も言っていないのにスミレが気持ちを理解出来るのは、長年の付き合い故だ。

無口で人見知りで無気力系であっても、シズルはミュウツー。もって生まれた好戦的な遺伝子に、抗うことはできない。人間の本能的な欲求と同じだ。


「・・・キキョウに着く前に暗闇の洞穴があるから、久々にキンカと模擬バトルでもしようか」

「!」

『・・・シズル、格闘系の技はやめてくださいね』

「うん」


このメンバーの中で、シズルと対等にバトル出来るのはキンカだけである。長年スミレの相棒であるシズルには、同じく長年サカキの手持ちであるキンカでなければ渡り合えない。
二人の強さは、旅立ってすぐのトレーナーには反則もいいところだ。こういうのを異世界では"チート"と呼ばれていたな、と思い出し、スミレは苦笑した。


「それにしても、知り合いって誰だろー・・・私とシズルの知り合いってことは、昔からの付き合いだし」

『?知り合いにお会いになるのですか?』

「あ、ズバットには言ってなかったね。何か色々あってそこそこ信用出来るウツギ博士っていう人の知り合いの家に、私とシズルの知り合いって人が来てるんだって」

『・・・・・・世間は狭いのですね』

「ねー」


ウツギ博士に出逢い、エンジに出逢い、強引なお爺さん二人の話を聞き、それなりに顔見知りであったズバットとも再会した。
何万人、何億人の人が世界に存在していようと、生き物の出逢いや縁というものが繋がっているのだと思うと、スミレは少なからず勇気付けられる。家族であるシルバーやサカキにも、いつか必ず再会出来ると信じられるからだ。

ズバットとの再会や、エンジの言葉で、その昔折れてしまったスミレの前向きな心が少しずつ修復されている事実に、シズルとキンカはほっとしていた。
マシロによって異世界に飛ばされた時の、スミレの酷い状態を知っているからこそである。


「あ、」

「ん?」

「・・・家がある」

「んー・・・・・・ホントだ。じゃあ、あれがポケモンじいさん?の家だろうね。この辺りに民家なかったし」

『俺、ズバットの兄ちゃん以外でスミレの知り合いに会うの初めてだ!』

「そういえばそうだねー。アジトに帰ったらみんなに紹介してあげるよ」

『タ・・・ランスにも!?』

「うん、勿論」


エンジの発した言葉に、反応したのはズバットだ。


『タ・・・?』

「ん?あぁ、うん・・・っふ、」

「・・・ククッ」
『あははっ!』
『・・・・・・・・・』←震えてる

『?』


スミレの物真似を思い出した一同が笑い、ズバットは疑問符を頭に浮かべる。
何故笑ってしまったのかをズバットに説明すると、彼も彼で色々と思い出したのか、色んな物を押し止めながら必死に笑いを殺していた。


「イケメンだからこそ些細なことで笑えるランス兄様が憎い」

「・・・同感」
『否定しません』

『ラムダ様やマスターの場合は、笑いがデフォルメ装備ですからね・・・』

「確かに」

「・・・アポロがやったら、笑えないね」

・・・・・・


本人を知っているからこその爆弾発言に、スミレ、キンカ、ズバットの顔が青ざめる。


「・・・ちょ、想像させないでよ」

『???』

「・・・エンジも、その内会ったらわかるよ」

『?、おう!』


幼い彼が無邪気な笑顔を引き攣らせる日が来るのも、それ程遠くはない。




クダラナイ笑いが
(僕らの日常)




2011.06.12



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