歩けば出てくるポッポとひたすらエンジを戦わせて29番道路を進み、ようやくヨシノシティが見えてきた。


「ポッポばっかり倒してたから、エンジ素早くなったねー」

『?ポッポ倒すと足が速くなるのか?』

「・・・・・・スミレ」

「ごめん。つい、さ」


異世界にいた頃、BWのバトルサブウェイにハマってしまい、尚且つポケモンは自分が元々居た世界だということも相まって、軽くポケモン廃人になりかけていたスミレ。
バトルをするにしても、気が付いたら努力値のことを考えてしまうのは、致し方ないことだ。
ちなみに、サブウェイマスターは恋人にするならノボリ、親友ならクダリらしい。


「・・・にしても、最新型のポケモン図鑑ってすごいね・・・エンジが覚えた技までわかるんだもん」

『へー!人間の技術ってすげーな!』

『お嬢様、私はどうでしたか?』

「・・・・・・・・・父様が技マシンを大量酷使したことは理解できたよ」

『そ、そうですか・・・』


微妙な顔をするスミレとキンカ。シズルは『技マシンってなんだ?』と聞くエンジに、丁寧に説明している。
根が明るく無邪気なエンジに、シズルも大分慣れたようだ。意外と打ち解けている。


「それにしても、この図鑑は人に見せられないね・・・ヒノアラシとポッポとペルシアンとミュウツーしか載ってないとか・・・」

「・・・完全に狙われるね」

「ね・・・」


一行が少し憂鬱になりかけた時、ピカチュウポシェットから"赤いスイートピー"が流れ出した。


「あ、ウツギ博士だ。さっきバイバイしたばっかりなのに」

『すげー!ポケギアが歌うたってる!』

「・・・っていうか、何でその選曲?」

「え?いや、向こうの世界にいたら、ウツギ博士って聖子ちゃん好きそうだなーって・・・もしもしー」


『それは偏見なのでは・・・』というキンカに苦笑を返しつつ、電話に出る。
どうやら、サカキが改造したテレビ電話のような機能はイッシュ地方のライブキャスターの機能らしく、普通のポケギア相手だと普通に着信するそうだ。(アテナ情報)


《あ、スミレちゃん?》

「はい」

《さっき別れたばっかりなのに、ごめんね。急に用事が出来て・・・》

「大丈夫ですよ。何ですか?」

《僕の知り合いに"ポケモンじいさん"っていう人がいてね、珍しい物を見つけると「大発見!」って大騒ぎする人なんだよ》

「大好きクラブもビックリなポケモン好きさんですね」

《あはは!それでね、そのポケモンじいさんの所にお客さんが来てるらしくて・・・スミレちゃんとシズル君の知り合いらしいんだ》

「へ?知り合い?」

《うん・・・名前聞いたんだけど、「お楽しみはとっておくべきですぞ!」って、切られちゃったんだよね》

「えー・・・」

《だから、ちょっとポケモンじいさんの所に寄って欲しいなって・・・あ!もしかしてもうキキョウシティまで行っちゃった!?》

「いえ、まだヨシノシティ(のギリギリ手前)ですよー」

《よかったー。じゃぁ、よろしく頼むよ!ポケモンじいさんは、ヨシノシティを通り抜けた少し北に住んでるからね》

「わかりました、ありがとうございます」


怪訝な表情で電話を切るスミレに、キンカが問い掛ける。


『何の用事だったのですか?』

「なんか、ポケモンじいさんって人の家に、私とシズルの知り合いが来てるから会いに行って欲しいって」

「・・・・・・知り合い?」

「うん・・・まさかロケット団員じゃないよね・・・」

「・・・・・・まさか」

「えー?誰だろー・・・シルバー・・・は、有り得ないよね」

『若様がそのような方と仲良くなさるとは到底思えませんが・・・』

「だよね・・・」


悩む三人に、話に着いていけないエンジが『シルバーって誰?』と口を挟む。


「私のちょーかわいくて大切な宝物だよ」

『・・・宝物?』

「うん。弟なの」

『スミレ、弟いたのか!』

「・・・・・・生意気なね」

「それはシズルに対してだけでしょ」


ぎゃいぎゃい騒いでいると、いつの間にかスミレ達はヨシノシティへ足を踏み入れていた。


「お前さん達!」

「あー、やっと着いたね」

「・・・うん」
『そうですね』
『だな!』

「ちょ、そこの可愛い嬢ちゃんとイケメンのあんちゃん!」

・・・・・・・・・


到着の喜びもつかの間、知らないおじいさんに声を掛けられる。
しかも微妙な呼ばれ方だった為、スミレとシズルの心の声がハモっていた。


(振り向きたくない)

「お前さん、新米トレーナーか?図星じゃな!」

「(えー・・・)・・・新米といえば新米ですね」

「・・・・・・(誰この人)」

「・・・(知らないよ!)」


目線で会話する二人と、あまりの勢いに呆然としているキンカやエンジは、かなりドン引きな様子である。
それでもニコニコとしているおじいさんは、鈍感なのか、ただのいい人なのか、図りかねるところだ。


「よいよい、誰だって初めてはある。わしが色々と教えてやるから、心配はいらん。さあ、わしに着いて来い!」

「え・・・えぇー・・・」

『お、お嬢様!!』


おじいさんに腕を掴まれたスミレが反射的にシズルの手を掴み、スミレの頭に乗っているエンジはそのまま、置いて行かれそうになったキンカが焦る。
端から見れば、かなり奇妙な光景だ。


「ここはポケモンセンター!傷付いたポケモンを預けると、あっという間に手当てしてくれる!しかも、トレーナーなら無料で宿泊したり、食事ができる施設もついた優れもの!これから先、何回も世話になるじゃろう。覚えておいた方がええぞ!」

「はぁ・・・」

「ここはフレンドリィショップ!おやつに弁当、ポケモンを捕まえるボールとか、色んな商品を売ってるぞ!」

「そうですね・・・」

「この先は30番道路!自慢のポケモンを戦わせている者もおるし、少し先にはポケモンじいさんの家もある!」

「ああ、この先に・・・」

「ここは、ご覧の通り海!水の中にしかいないポケモンもおるんじゃ!」

「・・・(オタマロ見てみたいなぁ)」

「・・・で、ここがわしの家じゃ!」

「エェエェエ」
・・・・・・・・・


ここまで来るのに、約十分。見事な程の短時間でヨシノシティを観光し終えたスミレは、オチがおじいさんの家だったことに戸惑いを隠せない。
手持ち陣は、もはや言葉も出ないようだ。


「うむ。ここまで来てくれた代わりにこいつをやろう!」

「これは・・・?」

「ズバットじゃ!」

「・・・・・・・・・・え?」


――何ですと?




強引じいさん×2
(お年寄りには着いていけません・・・)




2011.05.16
このおじいさん好き。



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -