スミレが旅に出るとランスに告げた翌日の朝、玄関ホールはてんやわんやな事態となっていた。
ちなみに、シズルやマシロは先に出たと嘘をつき、シズルはボールの中、マシロはあちらこちらの地方を見回りに出ている。
キンカだけが、ボールに入らずスミレのお供として隣にいた。
「お嬢様、ハンカチとティッシュは持たれましたか?忘れ物はございませんか?サカキ様の写真もきちんと持ちましたか?」
「父様の写真は持ってないけど、忘れ物はないですよ、アポロさん」
「それはいけません!どうかこれを持っていってください・・・!」
「え・・・」
キャラの崩壊したアポロに渡されたのは、白地に"R"と赤いロゴの入ったポケギアだ。(しかも、待受画面がサカキである)
「スミレ、それはロケット団専用のポケギアですよ。電波等、あの煩わしい犬に嗅ぎ付けられないよう、特殊な仕様になってます」
「あー・・・ロケット団の生き残りが捕まったらまずいもんね」
「はい。あと、私たちの連絡先は既に登録してありますので」
「ランス兄様ありがとう」
自分の世界に入ってしまったアポロを放置してランスと話していると、アテナとラムダがやってきた。
「スミレちゃん、わたくしからは、これをあげるわ」
アテナから渡された物は、いたって普通な銀色のアタッシュケース。スミレが首を傾げると、アテナはその説明をする。
「ほら、ロケット団だとポケモンセンター使えなかったじゃない?
仮にも犯罪組織だから、調べられたらアウトだし・・・だから、六匹以上手持ちがある団員は、みんなこれに保管してたのよ。回復機能はないけど、役に立つと思うわ」
「・・・ッ!アテナ姉様大好き!」
「ふふっ・・・スミレちゃんってば、相変わらず可愛いんだから」
スミレがアテナのふくよかな胸に埋まるよう抱き着くと、後ろから「俺様を忘れないでくれよー」というラムダの声が聞こえた。
振り向けば、彼は困ったような表情でスミレを見ている。
「俺からは、これな」
ラムダが渡してきたのは、少し大きめのリュック。
これは何かと疑問の視線を向けると、「嬢さんの着替え」とだけ返ってきた。
「着替え・・・?」
「嬢さんも年頃だしな。動きやすくて女らしい服、選んどいた」
「ら、らむださん・・・」
みんなの気遣いが嬉しくて、スミレは思わず泣きそうになってしまう。
しかし、旅立つにはここでぐずぐずしていられない。
スミレは精一杯の笑顔を作り、明るい声で大きく言った。
「行ってきます!」
(世間が"悪"と罵ろうが)
(私にとっては大切な人)
2011.05.14
短くなりました。
R団幹部陣はヒロイン大好き設定。